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夢現塾日報 blog

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我が家のMER出動(加)

2023.06.02

「助けてー!誰かー!」
深夜12:30。午前0時の森を見ながらお菓子をモグモグと口に運んでいるときのことだった。
外から甲高い叫び声が聞こえてきた。

「キャー!誰かいませんかー!」
その声は途切れることなく台所の裏側から聞こえてくるのだ。

(ひぃ…不審者だ…)
そう思った私は怯えながら声がなくなるのを待とうと思った。
が、声は途切れることを知らない。
恐怖の限界に達した私は、玄関の鍵がかかっているかを確認した後、猛ダッシュで両親の眠る寝室に向かった。

「外に不審者がいる!ずっと叫んでる!」
と声を震わせながら伝えているところに、寝ていたはずの妹も現れた。
「私の部屋からも聞こえてた!」
恐怖におののく娘二人を見た両親はしぶしぶ布団から出て、その声を確認しにいく。

すると、「あれ、近所の〇〇さんの声じゃない?」「本当だ、◯◯さんの声だ。」と父と母が顔を見合わせた。
そしてすぐさま玄関の扉を開け飛び出す父。次いで母。
私と妹は、追いかけることにしぶりながらも、スマホも懐中電灯も持たずに出て行った二人を追いかけた。

外に数歩出ると、母と父の叫び声が聞こえてきた。
「◯◯さん、大丈夫ー?どこにおるのー?」
どうやら近所の◯◯さんの声は聞こえども、その姿は見当たらないようだ。

ここで妹が呟く。
「まさか、貯水槽に落ちてるんじゃない?」

そう、そのまさかだった。
私の家の裏側は現在、貯水槽を造る工事の真っ最中。軽くロープが張ってあるだけで、いとも簡単に侵入は可能だった。

しかし、貯水槽を覗いてみてもスマホの懐中電灯の明かりではほとんど照らすことはできなかった。
近くに行けば行くほど、私たちも貯水槽へ落ちてしまう危険性もある。恐る恐る近づいていく。

そのとき、妹が叫んだのだ。
「あ!あそこにいるかも!〇〇さーん!聞こえますかー!」
わずかな動きも見逃さなかった。すぐさま、私は震える手を押さえながら、スマホを手に取った。
(119…119…)
こういうときに限って、緊急電話の仕方が分からない。仕方なく番号を打ち、呼吸を落ち着かせながら救急に電話をかけた。

「近所のおばあさんが、貯水槽に落ちています。高さはおそらく13mはあります。意識はありますが、声が途切れ途切れで… 年齢は94歳です。」

伝えられらることを伝え、早く来て欲しいと必死に思いながらスマホを握りしめていると、妹が驚きの行動に出ていた。
貯水槽に迷わず飛び込んだのだ。そして、壁をつたいながらおばあさんの元へと足を運んでいく。
◯◯さん、大丈夫ー!?もう私が来たから大丈夫だよー!一緒におるから安心してねー!

後日談によると、叫び声が聞こえてから30分ほど経っていたため、おばあさんの体はかなり冷え切っていたそうだ。
「もう大丈夫だよー!私に捕まっていれば温かいからねー!」

ご存知の方もいるだろうが、私の妹は看護師である。こういうときに自らの危険を顧みず、人を助けようとする姿はまさに看護師の鏡であり、冷静沈着な姿勢に私もしっかりしないとと奮い立たされたのだった。

そうこうしているうちに、救急隊がけたたましいサイレンを轟かせながら現れた。
カエルと虫の鳴き声が響く静かな田舎に、消防車3台と救急車1台、パトカー3台が停車し、周りはあっという間に野次馬に囲まれた。

オレンジ色のボートに乗せられたおばあさんはガタガタ震えながらも無事救出されていき、その後に続いて長いハシゴをパジャマ姿で裸足の妹がゆっくりと登ってきた。

「二次災害にもなり得るので、無茶はしないでくださいね。でも素晴らしい勇気でしたね。」
と警察官に叱られつつも、誉められる妹。
防寒に消防士さんのジャケットを着せてもらい事情聴取を受けるその姿に、姉として誇らしさを感じた。

救急の方曰く、私たちが駆け付けなければ間違いなく命を落としていたという。
一つの命が、私たち家族の行動によって救われたと思うととてつもない喜びが込み上げてきた。

そんな慌ただしい騒動も静まったころ、我が家のお風呂にも叫び声が響き渡った。
「キャー!痛いー!」
妹は工事途中の貯水槽に飛び込んだため、水や泥だけではなく、水底には工事による破片が散乱していたようだ。皮膚は擦れ、足には痛々しい傷が無数についていた。冷えた体を温めるため、湯船に浸かるも傷口が痛んだようだ。
しかし、痛む傷口をさすりながらも、笑顔を隠しきれない彼女の姿がそこにはあった。

自分のことよりも、目の前の命を最優先で救いに行く。妹は私の大好きなドラマ、TOKYO MERの喜多見チーフのようであった。



※防寒用のアルミシートに包まれマツケンサンバ状態の妹

私はというと…看護師ではない。目の前の命を最優先で救いに行く勇気も技量もなかった。
しかし、夢現塾の教師である。
私にできることは、目の前の生徒の幸せを最優先で考えること。それが私の使命である。

おばあさんを助ける為に何かできないか行動した妹のように、私も生徒の幸せのために何かできないか行動していこうと改めて考えさせられた事件であった。
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