先々月、名古屋市博物館で開かれていた兵馬俑展を訪れた。中国を統一した始皇帝の墓のそばで発見された兵士などの俑(日本の古墳の「はにわ」をイメージしてください)を中心とした展覧会である。始皇帝や兵馬俑に興味を持ったきっかけは、流行りの漫画「キングダム」の影響ではなく、中国の歴史書「史記」の影響である。・・・といえば言葉の響きはいいが、実際は横山光輝の漫画「史記」が土台となっている。
さて、始皇帝については歴史の教科書にはこう書いてある。
「紀元前3世紀には、秦の王が中国を統一する帝国を造り上げ、初めて「皇帝」を名乗りました(始皇帝)。秦は、長さ・容積・重さの基準や、文字、貨幣を統一しました。」
各地で使われているバラバラだった文字や計量単位を統一することは、国家としての一大プロジェクトである。計量単位の統一は税収の安定による国家の経済の発展につながり、単位の統一感によって政治権威を保持するのにも一役買っている。日本では豊臣秀吉が太閤検地によって全国の土地を米の体積である「石高」で表すよう統一したことが有名だ。
そんな単位の統一の革新的、世界的なものが「メートル法」。世界中でバラバラだった長さの基準をメートル、重さの基準をキログラムに統一するというフランスでの決定が世界中で注目され、各国が協力して普及させていくという「メートル条約」が1875年に結ばれた。なお、日本は1885年に加入。アメリカ合衆国は現在でもメートル法を公式採用しておらず、長さはヤード、重さはポンドを使用している。
そして今年。SI接頭辞(語)と呼ばれる単位で新たなものがいくつか追加された。SI接頭辞って・・・?となると思うが、実はよく使われている単位で、基準になる量の10の3乗(1000)倍を表す「キロ」や10のマイナス3乗(-1000)倍を表す「ミリ」といったおなじみのものから、10の9乗(10億)倍を表す「ギガ」、10のマイナス9乗倍の「ナノ」のような近年になって耳にするようなあの単位のことである。追加されたものの1つが「ロナ」。10の27乗倍を表す単位である。つまり1000000000000000000000000000倍。0の数が27個であるが、本当に0を27個打ったのか数えるのも嫌になる。それを「ロナ」の一語で表せるなんてなんて便利なのだろう。
ただ便利な反面、少し寂しい感じもする。地球から観測できる「宇宙の果て」まで138億光年離れているらしい。「光年」は光の速さで1年間に進む距離で、1光年をおなじみキロメートルで表すと約9.5兆キロメートル。つまり9500000000000キロメートルだ。その138億倍(13800000000倍)の距離が宇宙の果て。掛け算をしてみよう。0の数だけ見ても壮大で、とてつもなく遠く感じる距離である。さすがは宇宙の果て。
ところがこれを「ロナ」で表すと約0.13ロナメートルとなる。
宇宙の果てまでが0.13・・・やっぱり少し寂しい感じがする。