授業前、誰よりも早く来る子がいる。
私の夕飯タイムに、確実に毎週やって来る子だ。
「え?今日もざる蕎麦?」
「あ、今日はパスタ」
「えー!またざる蕎麦?」
「ラーメン!!!」
「あれ、今日は麺類じゃない…!!!」
毎週、教室に入る前に事務室に「必ず」寄り、私の夕飯チェックを行う。
来るたびに、かなりの確率で麺類をすする私の姿を見ている彼からは、『
麺類大好き加納先生』と呼ばれている。
しかし、今週は違った。
夕飯チェックをすっ飛ばし、おろしチキン竜田弁当を口いっぱいに頬張る私に言った第一声。
「300点いる!?!?!?」
そう、その日は先週実施されたMJテストの返却日。席順が決まる大きなテストであるため、小学生たちにとっては、大袈裟かもしれないが、運命を分けるほどのビッグイベントなのだろう。
ところで、お気づきだろうか。
ただの質問にしか聞こえないこの「300点いる!?!?!?」の一言。
これは、よく聞く
「俺何点だった?」
「90点以上はあった?」
「追試ではない?」
のような、質問とは違う。
「300点」というワードを出してくるところから、目指すところは全教科満点であり、自分はその該当者なのか…先生!どうなんだ!教えてくれよ、という確認だ。
案の定、こう切り出してくる子はテスト返しの時に、96点や98点など高得点を獲得しているにも関わらず、誰よりも落ち込んでいる。
100点以外は興味がないからだ。
「90点以上がいいな」
「追試じゃないといいな」
こう思っている人は沢山いる。いや、みんな思っているに決まっている。納得いく点数を取ることがまずは第一目標だからだ。もちろん、合格したいななどは言うまでもない。
しかし、その考えからもう1段階飛び出すことで人は大きく成長する。
「満点以外はいらない」と意気込むほどの
貪欲さが、人を強くし、そして人を変える。
どんな場面でも、「〜がいいな」と思うこと、願うことはだれでも可能だ。
しかし、
「~じゃなきゃだめなんだ」と自分に厳しく生きられる人こそ、何か大きなものを手にすることができるのだろう。
私の場合は2年前の体重に戻さなければならない。最近2キロ痩せたが、10キロ以外は興味がないのだ。
さあ、君たちは何を手にしなきゃならない?