5月23日水曜日、ここ数日の空模様とは違い、梅雨入り前の気持ちよい快晴。
妻とともに、平成18年より毎年恒例(笑)の、明治村の謎解きイベント『明治探偵GAME』に向かう途中のことだ。
東名高速道路、岡崎インターを入って最初のサービスエリア、上郷SAに立ち寄った。
昼食用のおにぎりなどをサービスエリア内のコンビニで購入し、駐車場を出発するところで、茶色のニット帽を被った一人の男性が
『守山PA』と書かれた看板を掲げ立っていた。
守山PA(パーキングエリア)といえば、名古屋インターの次。
小牧東インターで降りる僕らにとっては通り道だ。
「乗せてあげよっか?」
ハザードをつけて車を左に寄せる。妻が、乗りますか?と言うと嬉しそうに走って来た。
「よろしくお願いします!ボク、Sと言います!!朝6時からずっと立ってたんですが、やっと止まっていただけました!!」
と満面の笑顔。(ちなみに9時過ぎだったので三時間以上も!?スゴイ!!)
彼は自分の名前をフルネームで大きな声で名乗ると、こちらがあれこれ聞く前に色々と話し始めた。
現在大学3回生で、1年休学をしていること。秋からは世界一周の旅に出ること。そして、今回2回目(前回は友人と二人)のヒッチハイクの旅だと言うこと。
「大学は〇〇というところで、偏差値は高くないんですが・・・」
と少し控えめに大学名を名乗ると、続けざまに、
「でもボクこの大学でいろいろなことが学べました!実は1年浪人して国立大学の理系志望だったんですが、受験に失敗して・・・」
詳しく話を聞くと、S君は1年浪人したが、希望する国立大学には合格できなかったそうだ。
そして、希望していなかった県内の文系の某大学に進学したという。
しかし彼の話は、”行きたくもなかった大学のグチ” はひとつもなく、自分が選んだ大学で、こんなことをを学ぶことができた、こんな友人に刺激を受けたという話ばかり。
「大学の友達には、大学休んで何やってんだよってよく言われますが・・・たくさんの人に出会って、コミュニケーション力を身につけようと思いまして・・・」
恥ずかしそうに照れ笑いするS君だった。
守山PAまでは20分程度だっただろうか。
駐車場につくと、持っていたクーラーバッグの中から冷えたペットボトルのお茶を一本渡し、頑張ってね!と彼と握手をした。
「記念写真をよろしいでしょうか?」
ちょっと照れくさかったが妻と3人で彼の携帯電話で写真を撮り、S君とは別れた。
「良い子だったね!」
妻は車の中でニコニコしていた。
彼は自分の大学受験を「失敗」と言っていた。でも本当にそうだろうか?
確かに希望する大学には合格できなかった、でも彼はそこからたくさんのことを学び、自分自身を見つめ成長している。
不合格で自暴自棄になったり、入った大学で周りをバカにするでもなく、謙虚に他人を尊敬し、絶えず自分を磨き続けている。
私たちはえてして目の前の「成功」と「失敗」にとらわれがちだ。
でも本当の失敗は「できなかったこと」や「上手くいかなかった」ことじゃなく、そこから「何も学ばなかったこと」なのだろう。
S君、君の大学受験はぜんぜん「失敗」なんかじゃないよ。
爽やかな風を感じた5月の休日だった。