正月、ある本を読んだ。
『琥珀の夢』という名の本。
実家にいた僕に、父が「暇なら読むか?」と、自分が読み終えた本を渡してきた。
『仕事をする人』と言われれば、僕は真っ先に父親を思い浮かべる。
埼玉に住んでいる父は、職場の東京まで電車を使用している(今も通勤している)。
朝早く家を出て、東京行きの電車に乗る。
関東では、朝の東京行きの電車と、夜の埼玉行きの電車は『通勤ラッシュ』という言葉もあるくらい、電車が超満員となる。
僕も何度も乗る機会があったが、扉付近は身動きができないほどの圧迫感がある。
扉が開くたびに車内から駅のホームに押し出され、発車のベルが鳴るたびに車内へ見知らぬ人を押し込みながら入っていく。
持っている荷物が手を放しても落ちないほど、ギュウギュウに押される。
父はそんな満員電車で毎日通勤していた。
僕は“自分も将来この状態に身を置くのか…”と想像しただけで耐えられず、都内でサラリーマンになる夢を諦めた…(苦笑)。
しかし父は違っていた。
通勤に文句を言うことはなかった。
仕事の文句も言うことはなかった。
そして休日でも、何やら仕事をしていた。
会社で仕事が終わらずに、自宅に持ち帰ってやっているという様子でもなかった(苦笑)。
まるで趣味のように、何かに取り組んでいた。
子どもながら“これが働くということ”と感じていた。
そしてそれが、とても“カッコいい大人”に見えた。
最近の世の中は『仕事より家族優先』という風潮である。
しかしそんな中でも、僕個人は『仕事が第一』という古い感覚で生きている。
それは間違いなく、父の影響であろう…。
『琥珀の夢』という本を読みながら、ずっと考えていた。
父が何を感じたのか。
僕に何を感じてほしいと思ったのか。
僕にとって父は、『尊敬』や『憧れ』ではない。
僕にとって父は、僕の『誇り』だ。
僕も日々仕事と楽しそうに係わっている“カッコいい社会人”になろう。
そしてその姿を、今の塾生達が見て“僕も高橋先生のようなカッコいい大人になりたいな。”と、少しでも思ってもらえたら幸いである。
そう、昔の僕が見ていた“カッコいい大人”のように…。