祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
平家一門の興亡が書かれた「平家物語」の冒頭である。中2国語で暗記させられた生徒も多いだろう。「平家物語」は無常観をベースにした軍記物語といわれる。無常観とは仏教の教えの1つの「諸行無常」に基づく考えで、「この世のすべてのものは常に移り変わっており、何ひとつ同じ状態であり続けるものはない」というものだ。
この無常観は「いろはにほへと」でおなじみの中1国語の「いろは歌」でも登場する。
わかよたれそ つねならむ
強い断定である「反語」表現をここで習うことがあり、テストでは意味を選ぶ問題がよく出てくる。「世の中で誰が永久に変わらないことがあるだろうか、【いや変わっていくのである】」という意味になり、すべてのものは「常ではない」つまり「無常」であるということである。
前振りが長かったが、先日訪れた長崎市の観光地のガイドさんの話に衝撃を受けたのだった。日本三大夜景と呼ばれている今の長崎市の美しい夜景が見られるのも、あと20年ぐらいかもという話だ。
長崎市はすり鉢状の地形で平地が少なく、山の斜面にも多くの民家がある。その家々の光源が長崎の夜景の魅力の1つなのだが、少子高齢化と人口減少により、年々空き家が目立つようになり、光源が失われているという。長崎市としても重要課題として対策に取り組んでいるそうだ。
今の当たり前が、いずれ当たり前でなくなる。そんな当たり前のことをついつい忘れがちになってしまう。変化は当たり前。その変化を恐れず、今この瞬間を大切にして行動することが「無常観」の教えである。