8月末、私は友人の誘いで刈谷市に来ていた。
集合場所に着くと、今回誘ってくれた友人含む5人が出迎えてくれた。5人とも大学の同じ学科の友人である。
『お疲れ~』
「おお、来た来た~」
「はい、じゃあ早速…」
という言葉と共に差し出されたのは、テニスラケットだった。
そう、この日は大学の友人たちとテニスをする約束をしていたのだ。
昨年までにも何度か開催していたようだが、「とりあえず動けそうだから」ということで今回追加招集がかかり、私にとっては初めての参加となった。
『フォアハンドしかできんから、ラケット二刀流でもいい?』
「ラケット余ってるしいいよ~」
「そしたら両方フォアハンドになるもんね(笑)」
そんな冗談を交えつつ、軽く準備運動をして、ラケット(一本だけ)を手にコートに立った。
基本的にダブルスでとにかくラリーを続ける練習だった。
「はい、前前!」
「下がって~!」
「腰が引けてるよ~!」
周りが楽しそうに私に声を飛ばしてくる。
やっぱりどうしてもバックハンドができない。思ってもない方向に返球してしまったり、豪快に空振りをして、ブォン!とラケットが空を切る音だけが聞こえたりした。
ただフォアハンドなら、単に返球するだけでなくコントロールできるようになってきていたし、ミスをしても「うわ~惜しい!」と明るく声をかけてもらえて、ラリーを続けられるのが楽しくて必死でボールを追いかけた。
そしてあっという間に時間が経ち、コートの利用時間はもう残りわずかとなっていた。
「じゃああと3回にしようか」と言われ、始まったラリー。
…そこで突然、自画自賛のバックハンド返球ができた。
強い打球ではなかったが、ラケットにボールが当たった感覚、ボールの飛ぶ方向、軌道…、その日一番の返球だった。しかも、そこでコツを掴めたのか、その後続けて2、3回バックハンドで返球する場面が来たが、どれも思った通りに打ち返すことができた。
「完璧やん!」
ソフトテニス経験者の友人をも唸らせてしまい、私はその日得意げな顔で帰宅することになる。(笑)
大谷翔平があるインタビューでこんなことを言っていた。
「過程の積み重ねは大事だが、技術的なコツをつかむのは一瞬のことだと思っている」
その日の私には、この「一瞬」があったんだと思う。「もうちょっとでできそう…」というよりも、「うわ!なんかできた!(笑)」の方が感覚としては近かったかもしれない。
勉強も、そういう面があるのではないかと思う。
勉強の過程で少しずつ理解できるようになることもあれば、2回3回と解いても分からないような問題を、4回5回と解いていく中であるとき突然「あ!そういうことか!!」と理解できることもある。
その「一瞬」があるから、勉強もスポーツも面白い。
「できない」「わからない」と諦め癖がついている人も、2学期のスタート、気持ちを切り替えて、粘り強く取り組む力をつけていこう!