先日、惜しまれつつも東京有楽町に長年ある帝国劇場(帝劇)が静かに幕を閉じた。数々の名作が上演された場所。
その閉館に伴い、テレビで放送されたミュージカル特集番組。視聴者が選ぶ好きなミュージカルソングランキングで、見事1位に輝いたのは、帝劇で上演されていた中でもひときわ輝きを放っていた作品、『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」だった。
私も、帝劇に何度か足を運んだことがあった。大学生の頃、映画で観たレ・ミゼラブルの感動が忘れられず、舞台で、生の歌声を浴びるため、初めて帝劇に足を踏み入れた。
1,800人を超える観客を包み込むような、圧倒的なスケール感の劇場。舞台と客席が一体となり、観客を物語の世界へと引き込む。私の心を捉えて離さない、他の劇場とは全く違う特別な空気感を放った劇場だった。
そんな場所の一段高い舞台上から響く名曲の数々。スポットライトを浴び、観客の魂を揺さぶる役者たちの演技と歌声。舞台の上は、まさに19世紀のフランス。そこは、異国の物語が完璧に再現された空間だった。
その迫力に圧倒され、物語の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えたほどだった。
貧困や差別など、厳しい社会の中で生きる人々の物語。人間の善と悪、愛と憎しみ、希望と絶望。様々な感情が渦巻く壮大な人間ドラマ。時代を超えて普遍的なテーマを描き、観る者の心を揺さぶる。
その中でキャスト総出演で歌われる「民衆の歌」。それは、困難な状況でも希望を捨てず、自由を求めて立ち上がる人々の叫びだ。
「
若者たちの歌が聞こえるか?
光求め高まる歌の声が
世に苦しみの炎消えないが
どんな闇夜もやがて朝が…」
歌詞の一言一句が、私の心に深く突き刺さる。
そこには、どんなに苦しい状況でも、未来への希望を信じて立ち上がる若者たちの、力強い意志が込められている。
彼らの歌声は、暗闇を切り裂き、未来への光を指し示す羅針盤のように、私の心を照らしてくれたのだ。
聴く者の魂を奮い立たせ、内に秘めた可能性を呼び覚ます、そんな力強いメッセージ。
劇場という特別な空間で、役者たちはそれぞれの人生を演じる。
私たちの人生もまた、一つの舞台なのかもしれない。「
人生は舞台。人は皆役者。」私たちは皆、それぞれの物語を生きている。そして、これから始まる新学期、新生活は、新たな舞台の幕開け。
新しい環境、新しい出会い、新しい挑戦。期待と不安が入り混じるかもしれない。
そんな時、私も時々この歌を口ずさむ。貧困や差別に苦しみながらも、未来を信じて立ち上がる人々の姿の彼らと私の心が重なるのだ。
どんな困難な壁があっても、光り輝く未来が待っている。そう、勇気づけてくれる。
新しいことに挑戦するのは、勇気がいる。でも、一歩踏み出せば、きっと新しい世界が広がる。仲間と励まし合い、困難を乗り越える。自分自身の可能性を信じて、新しい舞台で輝こう。
現中3生、そして現高3生、卒業おめでとう。
新しい舞台で、あなただけの物語を紡ぎ出そう!