定期テスト対策になると、私の担当する授業ではタイマーが登場する。
黒板に磁石でつけることができて、最後列の生徒でも時間を確認することができる大きさのものだ。勉強の段階から時間を意識してテキパキ解く習慣をつけてほしいと思い、かれこれ3年間使ってきた。
私はそのタイマーに「マイケル」という名前をつけて(笑)授業で使用している。
特に由来はないが、私があまりにも自然に「マイケル」と呼ぶせいか、授業で登場させるたびに「マイケルだ!」と喜ぶ(?)生徒がいたり、タイマーの残り時間が0になると「先生、マイケルが呼んでます」と教えてくれる生徒がいたり、ずいぶん欠かせない存在になったものだなと思う。
しかし、そんなマイケルも寿命なのか、2学期の期末テスト対策のあたりから調子を崩すことが増えてきた。
何度電池を入れ直しても画面に数字が表れず、新しい電池に替えてみても、何の返事もしてくれない。
一部のマイケルファンからは「先生、今日マイケルは?」と聞かれることもあったが、「調子悪いんだよね」としか返すことができなかった。名前までつけて愛着も湧いており、すぐにお別れをする気にもならず…。
とりあえず冬の間、電池を抜いて自宅の机の上に寝かせることにした。
そんな中、ずっと公開を楽しみにしていた『劇場版ドクターX』を観に行った日があった。
とても感動して、心が熱くなって…、そんな状態で映画を観終わり自宅に帰ると、ふと、机の上のマイケルが視界に入った。
『まだ死んでない!!!』
大門未知子の声が頭の中で響いたのは、そのときだった。
そうだ、まだ、終わってない!!
私はなんとなく、抜いたまま放置していた電池を、マイケルの背面に入れてみた。
(…ピー、ピッピッピッピッ……)
おお!音出た!!
急いでマイケルをひっくり返してみると、画面には「88:88」の数字が点滅していた…が、正常ならば「00:00」と表示されるはず。やっぱりダメか…。
そのまま机の上に置くと、調子を崩し始めたあの時のように、うんともすんとも言わなくなった。
しかし、やっぱり諦められなかった。
もう一度電池を入れ直してみる。すると、今度は「ピピー、ピッ、ピッ、ピー…」と不規則に音を出し、少し経ってから、何事もなかったかのように「00:00」と表示した。多少反応は悪いものの、しっかりタイマーとして時間を計ることができる。
夜中の12時過ぎ、自室で小声で「おお、」と、静かに喜んだ。
奇跡の復活を遂げたマイケルは今、中学3年生の入試対策の授業や、小学生の百ます計算のタイム計測で活躍中である。もうすぐ始まる学年末テスト対策でも、久しぶりに一部のマイケルファン(笑)のみんなに見せることができそうだ。
ふとした瞬間に、“奇跡”が起こることがある。
しかし、その奇跡はたまたまではなく、それまで熱い思いをもって継続してきたことや、最後まで諦めない気持ちがあるからこそ、起こせるものなのだと思う。
受験生のみんなへ。
明日から私立高校の一般入試。これまでやってきたことを信じて、最後の1分、1秒まで諦めることなく、問題と向き合ってきてほしい。そして、体調管理にもしっかり気を付けてね。