ウにテンテンの「ヴ」。主に「v」発音のカタカナ表記である。
旧1万円札でおなじみの福沢諭吉が考案して以来、バ行(バビブベボ)の侵略を始めた。外来語が敵性語とされた太平洋戦争時に一時は絶滅しかかったが、戦後に再びバ行の侵略を開始。1991年の文化庁の国語審議会での「ヴ」の容認によってその勢力が拡大していったのである。
今年の教科書改訂で少し恐れていたこと。それは社会の人名表記の変更だ。以前の日報でも書いたが、
「リンカーン」→「リンカン」
「ルーズベルト」→「ローズベルト」
のように、実際に呼ばれていた母国語での発音に近づける表記への変更が進んでいる。
この流れで覚悟していたのが「ヴ」の登場だ。すでに中学校の音楽の教科書では
「ベートーベン」→「ベートーヴェン」
「ビバルディ」→「ヴィヴァルディ」
など、「ヴ」表記が定着している。
こうなると社会でも、「ヴ」の進出で
「ルーズベルト」→「ローズベルト」→「ローズヴェルト」
と、出世魚のような変更の可能性があったのだが、どうやら今回は見送られたようである。(東京書籍の歴史の教科書)
「ヴ」勢力は確実に拡大しているのだが、意外にも「ヴ」勢力が完全に削除された分野もある。それが日本語での国名表記だ。
「ヴェネズエラ」→「ベネゼエラ」
「ボリヴィア」→「ボリビア」
のように「バ行」の逆襲があり、2019年に最後の砦であった「セントクリストファー・ネーヴィス」「カーボヴェルデ」の2つの「ヴ」国が陥落したのだ。
国名に関しては外務省の管轄であり、省庁内で「ヴ」の扱いが違うのがおもしろい。これからも時代の流れで「ヴ」の扱いが変わっていくだろう。今後の「ヴ」の動きに注目している。