アレルギー体質で、季節の変わり目には鼻水が止まらない。あきれるほどに次から次へと出てくる鼻水に、いったいどこでこんなに大量生産されているのだろうと鼻をかみながら思う。
ということで鼻炎用のスプレーが欠かせなくなり、いつの間にかお守りのような存在になっている。外出時は常にポケットに入っており、持ってさえいれば安心という状態である。何気なくポケットをまさぐったときに、「アレがない」と忘れてしまったことに気が付いたときは手遅れ。気づいた瞬間から急に鼻水の生産が始まる。「病は気から」である。
アレルギー症状が出ているときは、いつもより嗅覚(きゅうかく)が鈍くなる。食べ物の味わいは味覚だけでなく嗅覚で感じ取る香りも大事だ。せっかくのおいしい食事も症状がつらいときは残念な感じになってしまう。
和食に付き物の漬け物は「香の物」ともいう。これは室町時代にできた言葉らしい。当時、文化人の間で大流行した香木の香りを嗅ぎ分ける「聞香(もんこう)」という遊びがあった。普段は嗅ぐ機会が少ない香木の香りを楽しむために、香りの強い漬け物を食べることで鈍った嗅覚をリセットしたらしい。聞香で使った漬け物=「香の物」ということだ。
東大寺の正倉院には「蘭奢待(らんじゃたい)」という香木がある。天下第一の名香と呼ばれ、足利義満や織田信長など時の権力者がこの香木の香りを楽しんだそうだ。織田信長は茶会でこの蘭奢待を披露したそうだが、やはり漬け物で嗅覚をリセットしたのだろうか。
※ちなみに蘭奢待の正式名称は「黄熟香(おうじゅくこう)」で蘭奢待は雅称(がしょう=雅な、おしゃれな別名)である。蘭奢待のそれぞれの3文字の漢字の中に、ある漢字が隠れているのを探してみよう。つなぎ合わせると〇〇〇になるぞ。(答えは↓)
今週から冬期講座がスタートする。嗅覚が鋭いことを指す「鼻が利く」という語は、敏感で物を見つけ出すことなどに巧みである場合にも使う。問題文をきちんと読み、鼻を利かせて解くためのポイントをきちんとつかむことが大切だ。
点差が大きく開く難問やひっかけ問題になればなるほど鼻を利かせることが大事。難問を解くヒントやひっかけようとする出題者の匂いを嗅ぎつけるのだ!
(答え)東・大・寺