夢や目標を宣言するタイプの人もいれば、心に秘める人もいる。有言実行も不言実行もどちらもかっこいいと思う。ちなみに自分はどちらかというと後者のタイプである。
では、まったく要望はないのだが、心に秘めて行動している目標の1つを発表しよう。
それは、歴史の教科書に載っている写真の建物や絵、資料のすべてを実際に自分の目で見ることである。あえて「すべて」とハードルを上げているのが粋だと思いませんか。(反語表現)
正確には、「教科書に載っているから見に行く」という義務的な考えではなく、自分が見たくて「見に行ったものが教科書に載っている」という結果論方式である。実際に現物を見た時に、そういえば教科書に載っていたなと思い出すパターンがほとんどだ。
昔の教科書に比べ、今の教科書には写真や図が豊富に掲載されている。しかもオールカラー。多くの資料には実際の大きさまで書かれてあるという至れり尽くせり。例えば漢から倭の奴国に送られた金印の印面は実物大で掲載されている(教科書33ページ)。印面は2.3cm四方で意外と小さい。知らずに博物館で実際に見たときの最初の印象はやはり「思ったより小さっ!」であった。
正倉院宝物の1つとして代表的な瑠璃杯(教科書44ページ)も、今か今かとワクワクしながら並んだ行列の先の視界が開けた瞬間、飛び込んできた想像以上の小ささにびっくりした思いがある。逆のパターンだと狩野永徳が描いた「唐獅子図屏風」(教科書112ページ)は想像以上に大きく、実際に見ないと味わえない迫力に感動も大きかった。
いずれにしても、固定概念が覆される瞬間は、驚きとともに自分の無知に対して新たな知識が補完される瞬間でもある。埴輪(はにわ)といえば「おーい、はに丸」などで植え付けらえた固定概念では茶色いイメージだが、実は色が塗られていた埴輪もあり、有名な武人埴輪(教科書34ページ)は、実は全体のほとんどが白色と灰色で塗られ、顔などの一部が赤色だったそうだ。
塾の教師としても固定概念が覆される驚きの瞬間がある。生徒たちが殻を破って大きく成長したとときだ。やはり、有言実行も不言実行もどちらもかっこいい。
※この形の埴輪は「踊る人々」と名付けられたが、最近は馬の手綱をひいている姿というのが有力な説だそう。