塾教師として学生時代から31年。数多くの子どもと接してきたが、いつからだろうか、「不登校」という言葉をよく耳にするようになった。保護者の方から、「専門の病院に行き〇〇という病気と診断されて…学校に行けないんです」という旨の話を幾度となく聞いてきた。病気と診断された子が学校に戻る確率は少ないし、病名がつくとその診断に従い療養が必要になるのであろう。病名も複雑化していて多様だ。病気の一歩手前の状況というのであろうか、「この子危ないな。不登校になりそうだな…」なんて感覚も備わってきているため、心配な子には、早めに手を打とうと何とか試行錯誤してきたつもりだ。甘えを叱ったり、やれたことを褒めたり、約束を守るように指導したり、しょっちゅう声をかけたり、電話したり…と、うまくいく場合もあるが、残念なことにうまくいかない場合もある。その多くが、塾をちょこちょこ休むようになって、次に学校を休むようになって、行かなくなってしまうという悪循環だ。深刻ないじめや解決しがたい人間関係のトラブルも背景にあるのかもしれないが、何となく行かなくなってしまったり、何となく行けなくなってしまう子も多い気がする。「友達がいない・居場所がない」といった悩みが原因の一つになっている場合が多いと感じる。友達もいる、キャラクター的にいじめられそうもない、ただ朝が起きられない…、そのような場合の子も不登校になったりしている。
先日のニュースで愛知県には14,389人の不登校生徒がいると報じられていた。ほとんどの中学のクラスに1人や2人の不登校生はいるのだろうが、一学年160人、三学年で480人の中学で例えると、約30校分である。30中学の生徒がまるまる通学していないのだ。ちなみに平成30年度統計によると、日本全体で小学生44,841人、中学生119,687人、高校生52,723人、合計217,251人にものぼる。
不登校の先に親子で希望の光が見えているなら良いと思う。ただ、学校に登校するしないよりも、彼らがちゃんと世の中を渡っていけるのか、社会で生きていけるのかが心配でならない。1人の人間が100歳まで生きるためには最低でも1億円必要らしいが、そんなお金が家にある子はごくわずかだろう。そんな現実もしっかりと理解してほしい。
強く思うことは、小学生低学年くらいまでに「規則正しい生活・我慢すること」など、親は子どもにしっかりと教えこまなければならない。それだけでも、確実に大きな改善ができると思っている。
ちなみに、海外の不登校状況はどうなのか気になったので調べてみた。
アメリカでは、義務教育での不登校は違法とされ、親の「ネグレクト(育児放棄)」とみなされてしまう。要は、不登校を放置していると、親は警察に通報されたり、裁判所に出廷する羽目になって、最悪罪を起こした事になってしまうとのことだ。
ドイツでも、アメリカ同様に親には就学させる義務があるので、不登校は違法となり罰せられる。しかしながら、心理的な理由で不登校になった場合の体制が、かなりしっかりしており、専門医に子どもを診てもらえるようだ。
少なくとも、この二つの国では親の責任だと考えられている。 とはいえ、親も子育てのプロではない。だからこそ、子どもたちには自分の足で立ち上がることの大切さをわかってほしいし、気づいてほしい。
誰だって、朝は起きたくない。寒くなってくればなおさら布団から出たくない。友達と揉めた翌日には学校には行きたくない。家の中は快適で安全な場所だろう。でもね、君らが社会に出るまでに学ばなければならないことはいっぱいある。勉強だけじゃない。挑戦・失敗・挫折・成功…と本当にいっぱいね。それらを通して、強く逞しくなっていく。俺もそう、みんな悩んで大きくなったんだ。人生は面倒くさいことも多い。光があれば影もある。体が疲れたらぐっすり眠ろう!心が疲れたら、美味しものを食べたり、好きな音楽を聴いたり映画を観たり、美術館へ行って美しいものを探したり、体を動かしたり、散歩して自然に触れたり…リフレッシュしよう!コロナ禍、できることも限られているが心身の健康を保ち未来に向かってほしい。