生まれて初めて甲子園に行った。高校野球は大好きで、春も夏も録画して見ているが、生での観戦は初めてだった。
教え子が出場したことはこれまでにも幾度かあったが、残念ながら決勝戦まで進むことはなかった。決勝戦での勇姿に甲子園で声援を送ると、いつからともなく決めていた。
ご存知の通り、平成最後の年に東邦高校が春の甲子園優勝、日本一となった。
背番号5番、長屋陸渡選手は夢現塾の卒業生だ。小6から中3まで通っていた、明るく愛嬌のある野球少年だった。中3の三者面談で、「野球で生きて行こうとするならば、とにかく徹底的に負けず嫌いになれ!野球は当然として、勉強でもゲームでも何においてもだ。東邦は勉強のレベルも高いぞ。とことん負けず嫌いになれ…。甲子園に選手として出場したら、差し入れいっぱい贈ってやる。楽しみにしているぞ。」と、話していたのが懐かしい。
甲子園1回戦目、富岡西との対戦は4打数3安打の大活躍。夢現塾内でも教師みんなで盛り上がった。小学生時代に少年野球全国大会ベスト8の経験を持つ渡辺先生はもちろんのこと、サッカーとプロレス以外興味のない高橋先生や、ゴルフ以外興味のない廣瀧先生まで興奮していた。塾生もテレビ越しに応援していたようで、「すごいですね!」「かっこいいですね!」の声で溢れていた。その夜、約束通り大量のスポーツドリンクを郵送した(笑)。
それからの活躍も素晴らしかった。鉄壁の守備、見事な犠牲フライなど。そして、決勝5戦までのトータル、20打数9安打(4割5分)という驚異の結果。これは東邦高校トップの打率だった。心から拍手を送りたい。
3戦目終了後、「優勝メダル、見せてくれ!」と送ったメールに「はい!任せてください!」と強気の返信をしてくれた彼。習志野高校との決勝戦を制し、表彰式、行進、マスコミのインタビューを終えた後、目が合った瞬間、昔からの人懐っこい笑顔と小さくガッツポーズを見せてくれた。
すごいぞ!すごいぞ!甲子園優勝、本当に本当におめでとう。
彼は中3時代、シニアリトルの大会で全国優勝したキャプテンであった。そんな彼でも、名門東邦ではずいぶん苦労したようだ。帰りの新幹線の中で、いろいろな記事を読んだが、これが個人的には一番嬉しい記事だった。朝日新聞デジタルのものだ。
理想のスイング、大会で結実 東邦・長屋が守備でも闘志
落ち着き払った構えから、豪快なフルスイングが持ち味だ。
一回2死、フルカウントからの6球目。東邦・長屋陸渡は「ストライクは見逃さない」と、緩いカーブをとらえ、3点目の足がかりとなる中前安打に。八回には三塁走者の石川を悠々と生還させる右犠飛を放った。
強打が看板のチームで、2年夏まではベンチ入りできなかった。練習では石川、熊田らレベルの高い長距離打者の打ち方をひたすら観察した。時には助言を求め、理想のスイングを追究してきた。
「しっかりバットが振れる」と森田監督に評価され、6番を任された今大会。1回戦から安打を量産し、準決勝から5番に昇格。通算20打数9安打と打ちまくり、優勝に貢献した。勢いに乗って、この日は守備でも闘志を見せた。飛球を追ってカメラマン席に飛び込む。五回には横っ跳びでゴロをつかみ、連投の石川を助けた。
九回。ウィニングボールをミットの中で念入りに握りしめた。「東邦が成し遂げていない春夏連覇を達成しよう」。新たな目標を胸に、再びバットを振る日々が始まる。
彼の歩みが、努力が、苦労が、今大きな感動となって、彼の心に、僕らの心に、塾生の心に、多くの人々の心に刻まれた。日本一とはそういうことだろう。
他の卒業生たちも現塾生たちも、それぞれの夢や目標に向けて、一歩ずつ歩んでいこう。「千里の道も一歩から」。その踏み出した一歩が未来の自分を作ると信じて歩んでいこう!僕らも頑張る!