数年前のことではあるが、あの時の衝撃は今でも覚えている。
「リンカン大統領!!」
以前に社会の指導経験があったので、教科書改訂でどんなふうに内容が変わったのかと、興味本位でぱらぱらと歴史の教科書を見ていたときのことだ。
南北戦争のリンカーン、奴隷解放のリンカーン、「人民の、人民による、人民のための政治」のリンカーン、ダウンタウンが出演していたテレビ番組リンカーン…。僕の辞書には「リンカーン」はあっても「リンカン」の文字はなかった。
「間違い発見!」
教科書といえども、『雪国
はつらつ条例』を『雪国は
つらいよ条例』とある意味真逆の記載をした実績もあるように、意外と改定後の教科書初版には「ミス」がある。リンカンも「-」を入れ忘れるという初歩的なミスだと思った。
しかし、ミスではなかった。英語の発音に近づけるために表記を変えたというのである。そして今、歴史の教科書に登場する外国人名が変貌を遂げているのだ。特に1部の高校教科書はすさまじい。1例を紹介しよう。
バスコ・ダ・ガマ
コロンブス
マゼラン
大航海時代で覚える海の男たち、「海人」トリオである。現在の中学教科書の表記はこうである。これがその高校教科書では
ヴァスコ・ダ・ガマ
コロン
マガリャンイス
唇を軽く噛んでの「V発音」のヴァスコはともかく、後ろの「○○」はどこへ?のコロン、もはや「あなたはだれですか?」の域のマガリャンイス。今のところ2人は(コロンブス)(マゼラン)の注釈付きではあるが、そのうちその注釈も消えるのかもしれない。
海外の偉人が現地での発音に近い表記になるのなら、日本の偉人も現地の発音(方言)に寄せていくのだろうか。いつの日か教科書に
「せごどん(西郷隆盛)」と表記されるかもしれない。