ある夜、本屋で一冊の本を手に取った。
『世界の絶景・秘境100』
その本の中で、衝撃を受けたページがあった。
「危険な絶景 ノルウェー・トロルの舌」
その本を迷わず即購入し、興奮した私は家に帰るやいなや妹の部屋に駆け込み「これ見て見て!」を連呼。
続けてすぐさまそのページの写真を撮り、旅仲間の友人にすぐに送信したのだった。
「ここ、行ってみたいね」というメッセージと共に。
それから3年後の8月。
気温12℃の中「ALOHA」と書かれた浮かれたTシャツにビーチサンダルというスタイルで、私はノルウェーにいた。
飛行機を上海で乗り換え、オランダへ。着いたと思えばまた乗り換え、そしてノルウェーへ。さらに今度はプロペラ機に乗り換える。日本を発って23時間後、ようやく目指す都市へと辿り着いたのだった。
休む間もなく朝7時、トレッキング開始。登山用の重たいザックを背負い、いざ「トロルの舌」へ。
徒歩往復11時間。途中トイレ無し。足腰よりも、膀胱との戦いが始まった。
見渡す限り、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のような世界が広がる大パノラマ。
苔が付いた岩と、壮大なフィヨルド、そして遠くに見える雪山。
アップダウンを繰り返しながら、私の足は何かにとりつかれたように早足で進んでいく。
早くあの場所へ行きたい…!
ノルウェーの壮大な景色は疲労を癒す効果すらあるのだろうか。微塵も疲れを感じることなく、小走りで坂を駆け下り、登り、5時間後。とうとうあの場所へと来てしまった。
すごい…
すごい以外の言葉が出てこない自分の語彙力のなさを恨んでしまう。
本で見るよりもはるかに大きくて、はるかに広くて、はるかに高い、そしてはるかに美しい。
本の世界以上のものが目の前には広がっていた。
しかし、今回の目的は見るだけではない。
この頂点がゴールなのだ。
記念撮影のための長蛇の列に1時間並び、とうとう自分の番がやってきた。
恐る恐る近づいていく。
この崖の向こうは、1000m切れている。
落下=死を意味する。
「落ちても自己責任」という看板があちこちにある理由は身に染みて理解できる。
そしてベタではあるが、座ってみた。
「ついに来た」この言葉が頭の中を埋め尽くす。恐怖など何も感じない。ただただ嬉しかった。
こうして私は、ノルウェーにまで行き、目的を果たしたのだった。
登山口に戻る間の5時間、私はずっと2つのことだけを考えていた。
1つは
「有言実行」。
「~したいね」をただ実行するだけ。
もちろん、いろいろな条件が重なって、実行できていることには感謝はしなければならないが、
「やりたいことがあるならやればいいだけなんだな」と歩きながらずっと考えていた。
実際にやってみないと夢も目標も現実にはならない。
2つ目は「トロルの舌の道のりまでにトイレを設置してくれよ」。
トイレはないと困る。「あと何kmでふもとに着く」というよりも「あと何kmでトイレに行ける」を励みにひたすら歩き続けたんだもの。
そして今年は珍しくも元気な状態で無事帰国し、夏期講座も元気な状態で終えることができたのだった。
現在、夏の終わりを告げるツクツクボウシの鳴き声すらもう聞こえなくなり、本格的に秋到来だろうか。
また戦いが始まる時期がやってくる。
MJテストまで約1週間。漢地獄まで約2週間、そして中間テストまで約1か月。
いい点採り「たい」なら、満点採り「たい」なら、ライバルに勝ち「たい」なら、勉強しよう。
いい点採ればいいし、満点採ればいいし、ライバルに勝てばいい。
「時間がない」「やる気が出ない」「何のために勉強するのかわからない」なんて口を開く前に、まずは机に座ろうか。
実行あるのみだよ。