童謡『ぶんぶんぶん』
ぶんぶんぶん はちがとぶ
おいけのまわりに のばらがさいたよ
ぶんぶんぶん はちがとぶ
「俺、この歌詞の
『すべて』の言葉の間に「る」を入れて、早口で歌えるんだぜ!」
僕が小学生の時、流行に敏感なある1人のクラスメートが何の前触れもなく言い、唐突に歌い出した。
ぶるんぶるんぶるん はるちるがるとるぶる
おるいるけるのるまるわるりるにる のるばるらるがるさるいるたるよる
ぶるんぶるんぶるん はるちるがるとるぶる
「笑っていいとも」が夕方5時から始まる一般世間からの隔絶の感があるこの片田舎に、世間の流行をある特殊なルートから仕入れ、おそらく披露前日まで猛特訓し、起床後は寝惚けまなこで復唱し、登校中には呪文のようにつぶやき・・・おそらく彼は本番までに相当の努力を積み重ねて仕上げてきたのであろう。
通常の『ぶんぶんぶん』の3倍のスピードの疾走感と斬新な「る」の響き、そしてノーミスと完璧であった。
そして彼はヒーローになった。
しかし・・・
賞賛の嵐の余韻に浸る時間は彼には与えられなかった。
「『すべて』の言葉の間だったら、『ぶるんぶるんぶるん』じゃなくて『ぶるんるぶるんるぶるんる』じゃね?」
クラスメートの説得力あるその一言が、流れを大きく変えたのだった。確かに彼は
『すべて』には「る」を入れてなかったのだ。そう完璧ではなかった。ミスをしたのだ。彼への賞賛が崩れ落ち、「風」が変わった瞬間を目撃したのだった。
生徒のノートを見ると、びっしりと書かれた英単語や漢字が間違っていることがたまにある。なんてもったいないことだ。努力や時間が無駄になってしまう。そして間違いに気付かないまま本番を迎えるのが最もキケンだ。
最初の一歩目で間違わないこと、これが肝心だ。そして途中でチェック機能を働かせる。そこで間違いに気が付けばいい。ミスが多い子はこれを意識するだけでも本番でのミスは確実に減っていくぞ!