I look forward to seeing you.(安)
「なっつ!!!!」
授業後の校舎。
生徒のいない自習室に、その一言が響いた。
そこにいたのは、二人の卒業生。
卒塾後、はじめて顔を見せに来てくれた。
近況報告をひと通り終えると、二人は当時授業を受けていた自分の席を探しながら、楽しそうに昔話に花を咲かせていた。
やがて本棚の前に立ち、教科書を手に取った瞬間、時間の流れを実感したようだった。
教科書を開き、指をさしながら
「ここ、変わってるな」
「え、こんなだったっけ?」
と、当時との違いに驚きつつ、終始楽しそうに話している。
その中で、変わらないページを見つけては、懐かしそうに声を上げていた。
「アイスプラネット!」
「ルロイさん!」
「魯迅!」
「かまきりりゅうじ!」
彼らの口から飛び出すのは、単元名や教科書に登場する人物の名前だけ。
それでも、その一つひとつの言葉が当時の記憶を呼び起こし、場のボルテージが一気に上がっていくのが分かった。
「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。」
『少年の日の思い出』の有名な一節を、二人が向かい合って同時に口にした瞬間、思わず笑みがこぼれた。
教科書を指さしながら思い出に浸る彼らの姿を見て、僕自身もまた、時の経過の早さを実感していた。
高校受験を経験した彼らは、高校生活、そして大学受験を経て、以前よりもずっと逞しくなったように見えた。
今後の目標を聞きながら、強く思う。
どんな未来でもいい。
一日の終わりに「今日もやり切った」と呟き、眠りにつけるのなら、それ以上求めるものはない。
逞しく成長した卒業生を前に、そんな思いを強く抱いた。