「ピンチやチャンスの場面で何を考えますか?」
こう質問したのはある高校生
これに答えたのが、イチロー選手、日米で大活躍したレジェンドの野球選手だ。
「僕は2009年のWBC決勝の韓国戦の打席が思い浮かぶ。当時、僕はしばらく結果が出ていなかった。そんな時に、同点になるチャンス。自分にとってはチャンスでもあったがピンチでもあった。この打席が今までで1番アタフタしていた。いつものルーティンをやろうとした。リズムに乗りたかった。でも、できなかった。前の打者が想定よりも早くアウトになって自分の打順が回ってきた。延長10回表で2アウト1・3塁。できれば敬遠してくれたらいいなと思っていた。マウンドには相手の監督やピッチャーたちが話している。『どうか敬遠にしてくれ』と願ったけど、ならなかった。キャッチャーが戻ってくると静かに座った。その時に、覚悟を決めたね。『これは僕の打席にするって』いつものルーティンをバッターボックスでやった。もう、これ無しではさすがにアタフタしてしまう。僕にとっての最低限のリズム。だからといって、難しい局面でこれだけで変わるとは思っていない。だけど、これが支えになった。そして、同点センター前ヒット。」
ルーティンの重要性が分かる話だ。
受験生は今からでもいいからいつものルーティンを作ってもらいたい。
国語の入試の前には何を見るのか。
数学、社会、理科、英語の前には何を手にするのか。
シャーペン、消しゴム、定規、鉛筆、筆記用具もいつものを準備しておきたい。
そして、イチロー選手のように目の前の現実を受け容れて、覚悟を決めて戦ってもらいたい。
続けてこうも話している。
「これまでたくさん負けたこともあるし、苦しいことも乗り越えてきた。言い換えれば難しい局面に立ち向かってきた。結果よりもこの立ち向かった姿勢が、最後には支えになってくれた。一番よくないのは平常心を保とうとすること。たとえ平常心に近い精神状態になれたとしても、それで生まれた結果には自信は伴わない。やっぱり自信を獲得するには、難しい状況に向かっていくしかない。」
公立入試を控えた受験生は大きなチャレンジの不安で押しつぶされそうになっているかもしれない。
それでいいと思う。とことこんビビって不安になればいい。むしろビビっていなくて不安がゼロと言うのはこちらが不安になる。
でも不安で心をいっぱいにしてもプラスには働かない。
かといって、不安をかき消そうとしても、ビビらないようにしても良くない。
だから誤魔化さないこと。
現状を、ビビっている自分を直視して受け容れる。不安な気持ちを受け容れる。そして覚悟を決める。それによって苦難も困難も乗り越えられるのではないかと思う。
腹をくくってもらいたい。
今これを見ている中3生にはすでに難しい局面が訪れたことがあるし、この先も訪れる。
目の前の試練に果敢に向かっていってもらいたい。
そして、第一志望校に合格したみんなの顔を見たい。ただ、それ以上に難しい状況に立ち向かって自信を獲得したみんなの清々しい顔を見たいと強く思う。