先日の台風10号、発生時から気象庁が再三にわたり厳重な警戒を促す発表を繰り返していた。ニュースやワイドショーなど、各メディアでもいつも以上に報道され、台風進路に近い実家のことも気になり、緊張感が高まる数日であった。
ここ数年、災害への備えに関する報道、情報量が多くなっている。また、なるべく早く、そして可能性が低くても万が一に対する危機意識を高めようとする傾向を強く感じる。近年の急激な気象変化が原因の1つだろうが、人間の心理面へのアプローチもあるのだと思う。
「正常性バイアス」
心理学用語で、「自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう特性」のことだ。そもそも人間の心は予期しない変化や新しい出来事にある程度「鈍感(どんかん)」であるという。ことあるごとに過剰な反応をして心身が疲弊しないための仕組みらしい。
大きな災害が起きても自分は当事者じゃないと鈍感になり、避難が遅れるケースがあるという。スマホでの撮影に夢中になり、すぐそばまで迫った危機に気付かずに危険な目にあうといったことも増えているそうだ。
そういえば10年ほど前、家でパソコン作業中にカミナリが家のすぐそばに落ち、ルーターから白い煙が出たのと同時にパソコンが壊れるという漫画のような経験をした。家の中なら大丈夫だろうという「正常性バイアス」がはたらいていたのは間違いない。
人間のもともとの仕組みが「鈍感」であるなら、やはり「敏感(びんかん)」になるアンテナを張る必要がある。誰かがほめられる、注意される、怒られる・・・。こういう時に他人ごとではなく、自分はどうなんだと意識することが必要な場面があるはず。僕ら教師は一人に声をかけながらも他の生徒がどのような反応をしているかを見ていることが多い。真剣なまなざしの生徒、相づちを打つ生徒、そういった生徒はやはり通知表の数字が良い傾向にある。
「鈍感」かつ「敏感」に。