「先生って”推し”とかいるんですか?」
いつからだろうか。この質問をされることが増えたのは。
「推し」という言葉は、主にアイドルや俳優、アニメのキャラクターなど、人に薦めたいと思うほどに好感を持っていることをいう言葉であったはずだったが、今ではオールマイティに自分の「好き」を表現するための言葉として世間に浸透している。
数日前にも同じ質問を受けた。
ハリーポッターのキャラクターなら、ハリーポッター推し。
ポケモンならニョロゾとホゲータ推し。
劇団四季の演目なら断然ライオンキング推し。
ディズニーキャラクターなら、ミッキーマウス推し。
ジブリのキャラクターなら、中トトロとカルシファー推し。
求められている回答なのかは分からないし、推しがいすぎるうえに、語り出すと止まらないため、推しについて話すとき生徒は引いていないだろうか…と喋りながらビクビクしていることが多いのだが、みんな意外と目を輝かせて聞いてくれる。
そして今度は生徒の番。
「先生私はね、SPY×FAMILYの○○が推しでね…」
正直、SPY×FAMILYのキャラクターはアーニャしか知らないのだが、生徒がどうも楽しそうに語るため、退屈を微塵も感じない。
好きなものを話してるとき、なぜ人はこんなにキラキラして見えるのだろうか。
そして、またある子はこう言った。
「
推しって、人生を楽しくしてくれますよね」と。
思わず共感のため息が出た。その通りなのだ。
好きなものに囲まれた生活、好きなことを考える生活、好きなものへの熱い想いは、人生を間違いなく豊かにしてくれる。
その点では今はすごくいい時代だなと感じる。
「推し活グッズ」と呼ばれるような物も手軽に買え、推しのキーホルダーを作ったり、推しのぬいぐるみやアクリルスタンドと旅をする写真をアップしたりと、自分の好きなものを堂々と好き!と大々的にアピールしても恥ずかしくない時代となった。
一昨日も生徒から、「先生、これ作ったんです!推しです!」とYouTubeのキャラクターが入ったオリジナルキーホルダーを見せてもらった。
ニコニコしてキーホルダーを差し出す彼女の周りには、目には見えないがパワーがあるというか、エネルギーをすごく感じた。
「好き」のパワーは本当に偉大だ。
自分を幸せにすることはもちろん、その幸せが溢れ出し、周りの人をも笑顔にさせる。
そしてときには行動を起こすときの強い原動力にもなることもある。
私の友人は刺繍が大好きで、それをSNSに発信したところフォロワーがかなりの人数となり、今や本を3冊出版する人気刺繍作家として活躍している。
また別の友人は、舞台と映画が大好きで、舞台女優となる夢を叶え、今は子育てをしながら今度は映画を作成、出演も監督も務めているそうだ。
ちなみに私自身もミュージカルが大好きで、友人と一緒にオーディションを受けに行き、舞台に立った経験がある。
「好き」や「推し」は世界を明るくしてくれる。
が、中にはもしかしたら好きなものがない、そもそも好きなものが何なのか分からないという子もいるだろう。
大丈夫。それを見つけるために今学校で色々勉強しているんだよ。どんな教科も満遍なく学ぶことで、興味があること、ないことが分かってくる。
そしてときには、あれ、意外とこれ好きかも!と、学ぶまでは気づけなかった自分の好きに出会えることだってある。そうやって人生を豊かにしていくんだよ。
さあ、もうすぐ夏休み。
この夏、君たちが沢山の「好き」や「推し」に出会えますように。
「推し教科は社会です」って子が増えてくれると嬉しい(笑)
やりたかったけど、時間がなくて手を出せなかったことにも是非挑戦してみてね!