先週の月曜日、目黒先生から
「高橋先生。先週の土曜日に幸田校の事務室のエアコン、冷房になっているのに暖房が出てきましたよ。しばらく時間たったら直りましたけど。」
と言われた。
そして炎天下の中、幸田校へと車を走らせた。
幸田校に到着すると、駐車場に車が2台。1台はワゴン車、そしてもう1台は高所作業車が停まっていた。
本日は看板の照明工事の日でもあった。
「こんにちは。よろしくお願いします。」
看板工事の方々に挨拶をして、幸田校の鍵を開ける。
幸田校のすべての教室の電気をつけ、エアコンの電源も入れた。
そして事務室のエアコンの電源を入れる時、先程の目黒先生の言葉が頭をよぎった…。
念のため…
思い切ってエアコンを
『冷房・19℃(設定温度の最低温度)・急風』
と、かなり攻めた設定で始動させた。
エアコンの吹き出し口がゆっくりと開く。
「ウィーーーン」
機械音が徐々に大きくなり、その音に比例して風の勢いも増していく。
エアコンの真下、吹き出し口の至近距離で様子を見守った…。
すると猛烈な熱風が、僕の顔と髪と首元に襲い掛かってきた。
外気温(36℃超)よりも高温の熱風の一撃で、僕の顔は汗まみれになった。
リモコンを武器に、この“荒れ狂うエアコン”と戦った。
『ドライ』を押す。
風力は弱まったものの、風はまだまだ熱を帯びている。
“逆に暖房にしたら、冷房が出るかも…?”
淡い期待を胸に、恐る恐る『暖房』を押す。
「ゴォーーーッ!」
風の勢いは急風へと戻り、さらなる熱風でさらなる汗が噴き出してくる…。
かなりのダメージをくらい、もう体力も気力も残り少ない…
再度祈りを込め、力強く『冷房』を押す。
しかし祈りもむなしく、風の勢いは急風のまま、そして温度も熱風のまま、地獄の風が顔に吹いてくる…。
「すみませーん。看板の照明の電源入れさせてください。」
看板工事の方が、気温37℃超の外の世界からやってきた。
「どうぞ、どうぞ。」
汗まみれの僕は、事務室の扉を開け、中へと案内した。
「暑っ。」
聞こえるか聞こえないかの、小さなつぶやきが聞こえた。
「すみません。暑くて…。」
「いえいえ。」
しかしその一言で確信した。
事務室の温度は、エアコンにより外よりも暑くなっていた…。
今現在、幸田校の事務室には新品のクーラーがついている。
しかし僕は忘れない。
事務室が37℃を超える灼熱の空間で、さらなる熱風に苦しめられたことを…。
そして看板工事の方も忘れないだろう。
夢現塾の教師が37℃を超える灼熱の空間の中、なぜか暖房をつけ、汗まみれになって、唐揚げ弁当と熱々のカップラーメンを食べていたことを…。