ある日の授業後、食事会が開かれた。
場所は幸田校。
高橋先生と僕(安田)の二人だけ。
これはある目的を達成するための『極秘の食事会』であった。
机の上に積み上がる緑のカップ。
これまでもこれからも、おそらく見ることのないこの景色が妙に心を躍らせる。
その後、机の上に広がる緑のカップ。
まるで綺麗に整備された芝生が広がるスタジアムに立ったようだ。
スタジアムであれば応援歌が鳴り響く。が、ここはスタジアムではない。
しかし、BGMが聞こえる。
2つのポットの中で水が躍っている。
この音が部屋に鳴り響く。
時間が経つにつれて、BGMが激しくなる。
それにリンクするかのように、心臓の鼓動も激しくなる。
手に汗を握り、武者震いまでしてくる。
まるで試合前のような緊張感だ。
ただ、そんな緊張で体を硬直させている場合ではない。
やらなければならないことが次から次へとやってくる。
カップにお湯を注いだら、すぐ新たにお湯を沸かす。
3分経ったら、湯切りでつゆだけを取り除く。
これを複数回、繰り返す。
準備は整った。
高橋先生との食事会が始まった。
これは会話を楽しむ食事会というものではない。
目の前のそばをたくさん食べることだけに集中した。
充満するそばの匂い。
具のない灰色のそば。
僕らと湯気の熱気。
2人がそばをすする音。
単調な味。
膨らむ胃、詰まる喉。
幸田校は、まるで「精神と時の部屋」のようだった。
この食事会は、まさに言葉通り「修行」だった。
数日後、盛岡で迎える勝負のための…
【明後日の高橋先生の日報へ続く】