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夢現塾日報 blog

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親切にもほどがある!(加)

2024.03.05

数日前、とある国を訪れたときの話だ。
最終日前夜、たまたまアクセスしたサイトにとても有益な情報を発見した。


“空港までの特急列車を予約している人だけは特別に、空港ではなく、駅で飛行機のチェックインが可能であり、かつ荷物ももちろんそのまま飛行機まで直接運んでくれる。さらには、出国審査までもでき、空港に到着したら、特急列車利用者専用入口を通り、荷物検査のみを行うだけで済むため、フライトまでの時間を荷物なしで、しかもギリギリまで楽しめる”


という、ありがたすぎるシステムなのだ。ベッドに横になりながら、私は迷わず「最高じゃん!」と一言口にし、その数分後には予約完了の確認メールを受け取っていた。


そして朝、6:30起床。

訪れる予定の観光地は9:00オープン。ひとまず駅まで向かい、チェックインやら何やらを色々済ませたら、ぴったり9:00ごろには入れるだろう。

ずっと楽しみにしていた場所。このために来たと言っても過言ではない。ワクワク胸を踊らせながら、メイクをし、髪の毛を整え、お世話になったホテルの方に挨拶をし、笑顔いっぱいで出発をした。スーツケースは来たときよりも重くなり、その分思い出も詰まっている気がした。


少し迷子になり8:30、駅に到着。駅構内で、特急列車エリアを探し家族でうろうろ。

方向は合っていると思っていたが、行き止まりになってしまった。仕方ない、戻ろうと向きを変えた瞬間だった。


チカテツ?」と現地のおじさんに片言の日本語で話しかけられたのだ。

地下鉄…ではなく、特急列車の方向に行きたいんだけどな。そして、私は翻訳アプリで「特急列車に乗る」と打ち込んだ。今思うと、このおじさんとの出会い、そして私が後先考えずに打ったこの文章が災難を招くとはこのときは思ってもみなかった。


「特急列車に乗る」と打ち込まれた画面を見せると、一言「アー…」と声を漏らし、再び「チカテツ?」と聞いてきた。理解されてないのだろうか…?

おどおどしていると、隣にいた妹が全力の笑顔で「地下鉄っ!」と答えた。隣で(なぬっ!?)と思う私。絶対地下鉄じゃないと思う。が、おじさんはスーツを着て、急いでいる感じだった。どこの誰かも分からない日本人を助けくれようと仕事に向かう途中なのに、私たちに時間を割いてくれている。

妹も「地下鉄=特急列車なんじゃない!?」と言い始めた。焦りと自信のなさにより、我々一行はおじさんを信じることに決めた。

すると、おじさんは私が持っているスーツケース2つを素早く取り上げ、とんでもない速度で移動を始めた。妹、母親、私の3人で必死に背中を追いかけていく。地下へ地下へとエスカレーターを使い、どんどんと下っていくおじさん。


すると、駅の看板に「特急列車」の文字が見えてきた。


えー!おじさん…ありがとう!


と思ったのも束の間、特急列車らしきエリアを通り過ぎたかと思うと、すぐ隣の地下鉄におじさんは乗り込んでいった。

一瞬で顔が青ざめた。これは間違いなく地下鉄に乗せられる。

が、ふと思うこともあった。

どうせおじさんとはここでお別れ。地下鉄に乗って1駅行ったらそこで降りて、元の駅に戻ってくればいいんじゃないか。重い荷物を長い距離持って案内してくれたおじさんの恩に背くわけにはいかないし。


…なんて考えはどうも甘かったようだ。


おじさんが一緒に地下鉄に乗り込んできた。あれ?おかしいな。仕事場の方向が空港方面なのかな?と色々考えた。が、私の頭には感謝という気持ちを通り越して「そろそろ解放してほしい」という思いしかなかった。

なぜなら、観光する時間がなくなるうえに、万が一空港まで連れていかれたら地下鉄(鈍行)でなんて、1時間10分もかかってしまうからだ。もうこれに乗って空港に行ってしまったら戻るに戻れないことは分かっていた。

翻訳アプリで必死におじさんがどこの駅で降りるかを聞いた。すると、「〇〇駅」だよ。と言う。

その「〇〇駅」に到着したとき、やっとここで加納家は安堵の表情を見せた。

だが、おじさんはその駅になっても何故か降りない。

再び襲ってくる、冷や汗。


「仕事遅刻しないですか?」という質問にも「大丈夫。」と返ってくる。「あとでバスで仕事場に向かいます。時間はたくさんあります。」とのこと。このやりとりは基本妹が翻訳アプリでしてくれていた。

隣にいた私の顔は完全に死んでいたことだろう。観光をしたいがために、フライト時間も少し遅め出発の高い金額のものを選択したのに、なんで私は早起きして化粧ばっちりで4時間も前に空港に向かってるんだろうか…おじさんと話すためじゃないよ…(泣)と本当にこのときは目に涙をためていた。


結局、空港まで付いてきた挙句、「買い物したりしたいので、ここまでで解散で大丈夫です。」と伝えると「僕もまだ時間があります。」と答えてきたため、「免税の手続きもあるので長い時間かかります。ここで解散で大丈夫。」と話すと、最後に写真を撮ってほしいと言われ、やっとのことお別れとなったのだ。


ありがたい…といえばありがたい。

だが、お節介といえばお節介。これは親切なのだろうか?と考え続けている自分がいた。

旅行の楽しみ方はいろいろある。現地の人との交流はその一つだ。しかし、迷子になったりしながらも、自分たちの足で行きたい場所に向かうのというのもまた旅行の楽しみ方の一つだと私は思う。


「少しのヒント」でいいのだ。こちらが聞いたこと、求めていること、に対して、少しのヒントがあればいい。それを鍵に最後は自分でゴールまで辿り着きたかった。

しかし、おじさんが与えてくれたのはヒントではなかった。ゴールだったのだ。


帰りの飛行機の中で、ずっとおじさんのことが頭から離れなかった。

「親切にしてくれたのに、お節介だと思っている自分…どうなのかな?失礼なのかな?でも最終日…全然楽しめなかったな。楽しめなかったどころか、空港にしかいなかったな。」

なんて自分を責めたりしてみた。だが、そんな思考と闘いながら気づいたのだ。


本当の「親切」とは、相手が自立できるようにアドバイスをするのが「親切」なのだと。

全て何もかもやってあげるのは親切ではない。相手が自立できないからだ。

生徒に対してもそうだ。難しい問題や心身の悩みが出てきたとしても、何でもかんでもすぐに答えを与えて終わらせるのは違う。解決できるかできないかのギリギリのヒントを出し、最後には自分で答えを導けるようにしてあげる。自立できるようにしてあげる。それが本当の「親切」なのだと私は思う。

誰かが解決してくれた問題や悩みからは何も成長が生まれない。思い入れもない。

最終的には自分で解決するからこそ、達成感や成功体験として心にしっかり刻まれるのだ。


おじさんの優しさは誰もが見習うべきなのかもしれない。しかし「親切にもほどがある!」ということも学ばせてもらった出会いであった。


昨日から夢現塾では新学年がスタートした。

どんな教師でいるべきか?どんな生徒に育てるべきか?特に考え改める時期でもある。

今年度はこう考えた。「自立させられる」教師になりたい。これから壁にぶち当たったとしても、気負わず人に頼れる、でも頼り過ぎはせず、最後はちゃんと自分で解決していくような子をたくさん生み出したい。人に可愛がられ、力強く生きていけるような子を。


今年度も、様々なことが待っていることだろう。

全ての経験を楽しみ、全ての経験から学びを得よう!今年度もよろしくお願いいたします。


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