小学生の子たちは作文の宿題があり、毎回お題が変わる。が、初めて提出する作文のお題だけは必ずこれと決まっている。
『朝起きてから学校に行くまでのこと』
日曜日に作文の授業をやっている途中、急に「私も似たようなものを書いてみたい」という考えが舞い降りてきた。
特に意味はないのだが、私もたまには作文を書いてみようと思う。
18:00ごろの幸田校。気分転換に玄関を開け夕日を眺めながら深呼吸。外の雰囲気がどんどんと変化を見せる時間だ。停めている私の車が黄金に輝き、美しいオレンジ色の夕焼けが眩しいほどに幸田の住宅地を照らしている。
幸田校から見える夕日は本当に美しいのだ。住宅街に挟まれた一本道の下り坂とそれを包むような大空。
目の前には沈みゆく夕日と、遠くに広がるきらきらとした街の明かりが見える。そしてときには近所のお家からの美味しそうな匂いが鼻をくすぐることも。
授業まであと
1時間… 事務室に戻り、腹ごしらえ。冷たくなったお弁当をカバンから取り出し電子レンジで数分温める。少しカロリー高めのホカホカのパスタを夢中で頬張りながらする考え事。
(今日来るメンバーは〇〇中の3年か。)
(テスト範囲どこまで進むかなぁ。)
(今日はみんなどんなテンションで来るかなぁ。)
(今日のお迎えはみんな校舎前だって分かってるかなぁ。)
(うーん、パスタだけじゃ足りないなぁ。でも最近太っちゃったしなぁ。)
そんなことをぐるぐる考えている時間も楽しい。
(もうすぐみんなが来る!)
散らかったごみを捨て、膨らんだお腹をポンポンっと二回たたき、食後の楽しみである大好きなエナジードリンクをズズズと3回ほどすすったところで、玄関の扉が開く音が。
「こんばんはー!」という声があとに続く。
最初の生徒の登場だ。私の顔に思わず笑みが溢れる。
「お、こんばんはー!」右手を軽くあげ、挨拶返し。
(さあ、今日も始まる!)
そのままの笑顔で誘導棒を手に持ち、暗闇の中で光を灯す。
集まる車。集まる人、人、人。
「こんばんはー!」
「夜なのに暑いねー!」
「あれ、髪切った?」
「前休んでたけど体調どう?」
「ん?いつもと車違うね!」
「わー、久しぶり!今日お兄ちゃんが運転してるじゃん!」
そんな他愛もない会話が夢現塾の前にはいつも飛び交う。
私は18:00ごろからのこの時間がたまらなく好きだ。言わずもがな、小学生の授業がある日は16:30ぐらいから大好きな時間がスタートする。
それは、
夢現塾に命が宿る時間。
大切な生徒たちがいて、教師たちがいて、みんなの笑顔あってこその夢現塾。
(さあ、今日もたくさん学ぼう。たくさん笑おう。)
教室のドアを開ける。
「
よし、じゃあ始めようか!」
これが私の『朝起きてから学校に行くまでのこと』ではなく、『出勤してから「あーりん(加納先生)」になるまでのこと』だ。