「無理だって言われました。」
「高校に行ってもついていけないって言われました。」
「受かる自信がないです。」
「志望校を下げようか悩んでいます。」
事務室内やメール、電話、あらゆるところからこのような悩みが飛び交うこの時期。
自分の進む道を決めるのは自分、とは言いつつ、本当にこれでいいのか?周りからはこう言われるから本当はこうすべきなのかな…と自分の「
進みたい道」がブレてくる。
ブレて当然だ。悩んで当然だ。先の見えない未来に今一人ぼっちで突き進んでいるのだから。
そんな孤独な気持ちの中、
「こっちの道はかなり危険だよ。」
「あっちの方が楽に歩けるよ。」
「装備が足りなすぎるから、これ以上進んじゃいけない。」
なんて言われたら、怖くてたまらなくなるに決まっている。
数年前に卒業した生徒との会話がふと思い浮かぶ。
内申45、学校での順位も常に10番以内。誰もがうらやむ彼ではあるが、自習室で見ない日はほぼなかった。受かることはほぼ確定なのにも関わらず、誰よりも早く自習室に足を運び、誰よりも遅く自習室をあとにした。
そんな彼が口にした言葉。ちょうどこの時期ぐらいのことだった。
「
先生、僕は怖くてたまらない。不安でたまらない。どんなに勉強しても、どんな成績をとってもこの不安が取れないんです。でもこの不安を少しでも取るには、やっぱり勉強しかない。だから僕は勉強します。」
どんなに成績が優秀な子でも、これだけの不安を抱えている。君たちだけじゃない。誰もが不安なんだよ。それに…本当のところ、私だって不安だ。未来は誰にも分からないから。
そんな不安の中、君たちが今精一杯出来ることは何だろう?
私に精一杯出来ることは何だろう?その不安を少しでもかき消す方法は何だろう?
卒業した彼の答えは、勉強だった。
私の答えは、生徒と共に現実と向き合い、どんな道を進もうと背中を押してあげることだ。
だから私は、何があっても君たちの味方でいるんだ。
そんなことを考えながら帰る夜。車内には私の声を代弁するかのごとく、中島みゆきのパワフルな声が響き渡っていた。
ファイト!闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト!冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ