「すみません。ちょっといいですか?」
幸田校の自動販売機補充員の方に話しかけられた。
「自動販売機のメーカーを変えてみませんか?」
僕は勝手に、この方は『キリン』の自動販売機の方だと思っていた。
それなので自動販売機の補充用トラックが校舎前に見えると、心の中で
「キリンがくる」
と思っていた。
そう考えると僕は、明智光秀も憧れる“麒麟が来る”世界をすでに作っていたのだ!
しかしこの方から
「自動販売機をサントリーに変えませんか?」
と言われた。
話を聞くと『キリン』専属の方ではなく、いろいろなメーカーを取り扱っているらしい。
僕は二つ返事で、変更をお願いした。
「自動販売機の品揃えは夢現塾で決めることはできますか?」
「もちろん大丈夫ですよ!」
僕はサントリーの自動販売機のメニュー表を受け取った。
しかしそれは、“麒麟が来ない”世界になることを意味していた…。
メニュー表を手に入れてから2日後。
僕の授業内で投票を行った。
「今から投票を行う。このメニュー表の全37種類の中から自動販売機に入れてほしい商品に〇をつけること。1人2つまで〇つけていいぞ!」
対象は幸田校の中1・2・3である(小学生はちょうど塾がない期間だったので投票には参加できなかった)。
子ども達は悩んだり、相談したりしながら票を入れていった。
投票結果の発表は、「新しい自動販売機が来てのお楽しみ!」と伝えた。
そして先週、新しい自動販売機が来た。
なんと全42本中16本が炭酸飲料であった(僕も投票結果の人気順を伝えただけで、何が何本入るかは知らなかった)。
「すげ~!めっちゃいいのばっかりじゃん!!」
自動販売機を見た小6の男子生徒が叫んでいた(笑)。
夢現塾の自動販売機は塾生専用の自動販売機である。
それなので金額も、自動販売機の最低金額の設定でお願いをしている。利益は求めていない。
そんな中170円の飲み物があった。『特茶』である。
これだけは子ども達の投票は関係なく、僕の熱い希望で入れてもらった。
しかしなぜか2本分のスペースで入ってしまっていた…。
子ども達は
「これ高橋先生の特別なお茶で“特茶”っていうんだよ!!」
とか
「なんか高橋先生の顔写真っぽいのが貼ってあるよ!」
などと僕の名前を言って盛り上がっているが、これは重圧である…。
子ども達には投票をして人気のある飲み物だけを入れた。
しかし特茶は僕の1票だけで2本分も入ってしまっている…。
さらには特茶だけ売れないと、次回からなくなるかもしれない…。
しかも悲しいかな『高橋先生の特茶』というレッテルが貼られてしまい、何より170円という高額な金額の壁が子ども達の購買意欲も大幅に削いでいるようだ。
誰も飲んでいるのを見かけない…。
120円のサイダーは、3本分のスペースでも3日で売り切れたのに…。
よし!こうなったら僕が特茶を売り切れになるくらい飲んでやろう!!
そして僕は特茶を1日2~3本購入することを心に決めた(特茶のパッケージには「1日1本が目安」と書いてあるが…)。
特茶は体脂肪を減らす効果があるはずなのに、特茶の飲み過ぎで僕の体重が増えていることを、僕以外は誰も知らない…。