最初に出会ったのは以前に勤めていた塾だった。彼の姉が通っていた関係で、小６生として入塾した彼を教えていた。ところが、中学に入ってすぐに辞めた。理由は「スピードが速いから、じっくりと自分で勉強したい」というものだったと記憶している。それから時は流れて、偶然コンビニで再会した。
目：ん？Sか？なんだお前！なんで茶髪にしてんだ！
S ：いやー、そのー。
目：おい、バカやろう。なにグレてんだよ！まだ中２だろ。周りの大人は何も言わないのか？何やっているんだお前？
S ：す、すいません。
僕のあまりの迫力に、少し驚いている様子だった。
翌日、古い名簿を探し出して自宅に電話をかけた。「お母さん、あんな状態、放置したらダメですよ！何かあったんですか？」いきなりの電話にお母様も驚いていた。
その翌年、僕は退社し、現在の夢現塾を開校することになった。新しく出来る塾のチラシを見たのだろうか、その生徒から申し込みがあった。もう一人、同時期に辞めた友人のTも勉強から離れてしまっている状態で、この度一緒に入塾したいとのことだった。
正直言うと、入塾テスト結果は点数が少し足りていない。不合格にとも考えたが、高橋先生と相談し、電話で意思確認をすることにした。
目：まず、髪の毛は黒くないと入塾できないけど黒くできるか？
S ：はい、ちゃんと黒くします。
目：いきなり茶髪の生徒がいて、「ヤンキー塾」って評判ダウンは本当に困るんだけど。本当に大丈夫か（笑）？微妙に茶色とか許さないよ。
S ：はい。大丈夫です。
目：授業のスピードがどうのこうのとか言わないか？ついて行けなかったら、自分がマズいと思って必死に頑張れるか？
S ：はい。もう成績がヤバいので頑張りたいです。
目：本当に約束できるか？
S ：頑張ります！
目：じゃあ、おまけ合格にしてやる。一緒に頑張ろうな。俺たちに任せろ。
それからの彼らの頑張りは素晴らしかった。真っ黒にした髪の毛で、自習室にも足繁く通って勉強していた。心配どころか、周囲の手本とも言えるほどだった。
目：あいつら、不合格にしなくて良かったね～。
高：いいやつらですもんね～。
高橋先生とそんな話をしたのが懐かしい。
Sは内申点を10近く上げて、希望の豊橋工業高校に進学。
Tも同じく10上げて、旭丘高校の美術科に進学した。
先日、幸田校で高橋先生と送迎していると、一台の大きな車が停まる。
目黒先生、お久しぶりです～。あっ、高橋先生もいるじゃないですかー。変わってないですね～。
そこには、ずいぶん大人になったSがいた。
彼は今、トヨタ自動車販売で営業マンをしている。茶髪のヤンキー少年の面影は微塵もなく、しっかりと30歳の立派な男性になっていた。
S ：報告遅くなりましたが、昨年、結婚したんです。夢現塾で頑張ったこと今でも忘れていません。その節は大変お世話になりました。
目：そっか、おめでとう！もう茶髪にはしないのか？
S ：しませんよ～(笑)。
目：子供生まれたら夢現塾に入れろよ。
S ：はい、もちろんです。
楽しいひと時だった。
人は成長していく。どんどん成長していく。本人にその気があるのなら、ちゃんと前に向かうことはいくらだってできる。
そんな経験を共有できるこの仕事に、僕らは誇りを持っている。
少し話は変わるが、幸田校中１生のある男子生徒は、小５生スタート時から通塾している。当時は本当に小さかった。学校でも断トツだったようだ。
中１生になった今年、1学期中間対策の際、僕は教室のドアに身長の記録を付けた。それから、テスト前には毎回チェックしてきたのだが、半年後の2学期期末対策時にはプラス7センチとなっていた。もう、学校でも一番低いわけではないそうだ。3番目だと言う。妙に嬉しい。
身長はどうすることもできないが、夢現塾では全塾生の「頭と心」をこれからもしっかりと鍛えてあげていきたい。
