いつも午後2時出社の僕らも、今日ばかりは午前9時45分には岡崎本校で待機していた。デスクのパソコンには、入試の自己採点や内申などが集計、計算、並び替えされている状態で全受験生のエクセルデータが開かれ、準備万全の状態だ。そう、愛知県公立入試発表の日であった。
午前10時になると、一斉に電話が鳴りだす。最初の電話を、目の前にいる高橋先生がマッハのスピードでとる。刈谷高校志望の幸田校女子生徒だった。
「合格したーーー!」「よっしゃ、よくやった!」と興奮と嬉しさが受話器の外まで溢れ出ている。『幸先いいぞ!』と、心の中でテンションが上がる。
「緑丘校〇〇、岡北第一志望合格!」「六名校〇〇、岡崎合格!」「幸田校〇〇、安東第一志望合格!」と、教師たちの声もいつも以上に大きい。そのたびに歓声が沸いていた。
僕は、ひたすらパソコンのデータに色付けをしている。合格は黄色。不合格は赤。何年もこの作業をしている。どこまで黄色が伸びるのかが重要だ。
特に、今年はA日程もB日程も理科がレベルアップしていた。B日程では英語にもずいぶん難しい問題が紛れていた。他の教科にもいろいろある。
正直、今年は特に、日頃の努力が報われにくい試験内容に思われた。言葉は悪いが、『実際に教えていない奴が作成しているのか?大学入試を意識しているんだろうが、ちゃんと生徒のこと考えて作れよ!』と、怒りで震えていた。例年、110点満点で100点を超える生徒が10名以上いるのだが、今年は3名だった。また、岡崎西・安城東あたりを受験している生徒の得点が、例年よりも確実に低い。だからこそ、昨年よりもボーダーラインが下がることは、当然予想していたがどこまで下がるのかが大問題であった。『下がれ!下がれ!』と祈りながらの作業である。
そんな中、幸田校の岡崎志望の女子生徒からの電話があった。
この生徒、学年1位を何度も獲得し、模試偏差値も70レベル。さらには超難関私立にも合格をしているのだが、なぜか、なぜか岡崎高校日程の理科で頭がうまく回転せず、大失敗していたのだ。昨年の合格ラインより、数点下の位置にいた。本人もお母さんも大ショックを受けていたし、僕らのショックも半端なものではなかった。『あんなに頑張ってきた彼女が岡高に行けないのか!マジか!』と独り言を思わずつぶやいていたこともあった。
その彼女の電話を取った教師が叫んだ。
「幸田〇〇、岡崎、合格です!」事務室がざわめく。「
えっ、岡崎に?本当に?代わって!」「岡崎か?北だろ?本当に岡崎か?よかったーーー。お前、ふざけんなよーーー。危なかったよーーー。本当に良かったなーーー。」「はいっ!はいっ!」と答える彼女の嬉しそうな声に、涙が出そうになった。本当に良かった。
その後も、たくさんの生徒の報告を聞いた。その中には希望が叶わず、電話の向こうで泣きじゃくる子もいた。当然だ。人生初と言っても良い試練に真っ向から立ち向かったんだ!頑張ってきたんだ!合格する気で燃えていたんだ!悔しいに決まっている。「
ごめんな。入れてやれんで。」「先生悪くないですよ。」「いや、俺らがまだまだなんだ。反省する。改善する。本当にすまない。ただな、お前はお前で次もちゃんと頑張るんだぞ。次は成功しろ。それもダメならば、その次こそ成功しろ。またダメならば、まただ。そうやって、何度も前に向かって闘って、いつか必ず成功しろ。目標を達成しろ。そして、今日の悔しさがあったから今があるんだって言ってくれ。それを俺、楽しみにしているから…」「はい、はい、頑張ります…必ず成功します!」
たった15歳の彼らに、もの凄いことを要求している。
でも、夢現塾で僕らと、そして仲間と一緒に闘った日々を忘れずに歩んで行ってほしい。
努力しても、頑張っても、結果が出ない時もある。不運な時もある。でも、それでも、努力しない人間に心の底から喜べる結果が出ることは絶対にありえない。
だからこそ、やはり「夢+努力=現実」なんだと強く訴えたい。そして、その努力の方法を精一杯考え、改善し、新たなチャレンジャーたちに伝えていきたい。
15の春が、その先の未来の希望に繋がるように…。
すべての卒業生の数ではないが、夢現塾15期生までの主要高校進学者の合計数である。一人一人にドラマがある。
岡崎高校265名、岡崎北高校489名、岡崎西高校497名、岡崎東高校200名、岡崎商業高校131名、岡崎工業高校83名、光ケ丘女子高校216名、刈谷高校65名、刈谷北高校26名、知立東高校8名、安城東高校187名、安城高校46名、豊田西高校53名、豊田北高校2名、豊田南高校1名、豊野高校3名、豊田高専24名、西尾高校18名、西尾東高校74名、時習館高校4名、国府高校18名、蒲郡東高校28名
数時間後、日本一豪華(?)と噂の卒業パーティーが開かれた。
家の事情で来れなくなった1名と、体調不良の1名を除いた卒業生全員が、豊田市にある
ガーデニングミュージアム「花遊庭」に集合した。遠方にも関わらず、なんと98.8%の出席率であった(2名には卒業記念品とお手紙を送るからね。また、顔を出してな!)。
大好きな夢現塾第15期生、卒業おめでとう!
いつまでもいつまでも大きな志を持って、逞しく、一歩ずつ歩んで行ってください。
みんなの素敵な夢や目標が叶いますように!
Where there is a will, there is a way.
意志あるところに道は開ける。