仕事が終わって、夜の12時。
シンデレラの魔法も解けて、馬車がカボチャに戻る時刻。僕の車は高速道路の上を走っていた。
助手席には渡辺先生、後部座席には安田先生。
目的地は名古屋のラーメン屋である。しかし僕以外の2人は、どこのラーメン屋にいくのかは知らない。
移動時間は1時間ほどではあるが、話をしていたらあっという間に名古屋に到着した。
1軒目は名古屋駅から徒歩圏内にあるラーメン屋。
過去に安田先生と来たことのある店であった。
ラストオーダー10分前の入店。3人の注文は名物の『玉子とじラーメン』。
渡辺先生は初の玉子とじラーメンに、安田先生は久しぶりのラーメンに、大満足の様子。
こんなに喜んでもらえれば、“ツアーコンダクター高橋”も、1件目にこの店を選んだ甲斐があるというものだ。
しかし食べ終わると一息つく間もなく店を出て、車に乗り込み次なる店へ。
今回のラーメン巡礼ツアーは、目標3店。それは各ラーメン店の閉店時間との闘いでもあった。
2軒目は名古屋のテレビ塔に近いラーメン屋。
北海道から麺を仕入れているというこの店は、プロレスやボクシングのポスターが貼られ、かなりロックな店内。
しかしここで予期せぬことが…。
想像以上にラーメンが出てくるのが遅い…。
下調べ万全の僕は、今回のツアーすべての店のラストオーダー、そして閉店時間を調べていた。
今回の狙いは、3men(スリーメン)が、3麺(スリーメン)を食べること。
時間がなくなり、食べられなくなるなんてゴメンだ。
しかしまったく時間が読めん。
おや?なんか文章に“メン”が多くなってきたぞ…。
こうなったら…。
調理があまり進んでいない厨房の場面。
とは言っても、この店を責めん。
動揺を見せずに被るのさ、平然を装う仮面。
早くしてくれ!踏みしめる地面。
そしてやっと出てきた『みそラーメン』。
次の店もあるから、スープは全部飲めん。
もう文章中の“メン”はいいか…(苦笑)。
1軒目との時間を空けられ膨張し始めた胃。そこにボリュームのある縮れた太麺。
この店は“1店だけの食事で来るべき場所であり、ツアー向きではないこと”を、3人は体で理解した…。
3軒目は2軒目から車で7分ほどのところにある店。
澄み切ったスープのあっさり系のしょうゆラーメン。
…を食べるはずであったが、時間はぎりぎり。
前の店で時間がかかり過ぎてしまい、店の付近についたのがラストオーダーの2分前。
しかも大都会名古屋のタクシー軍団が行く手を遮り、店までたどりつけない…。
安田先生が車から降りて、深夜の繁華街をスーツ姿で、走る、走る…。
しかし結局間に合わなかった。
そして毎回恒例のお決まりの『とんこつラーメン』の店へ。(本当はここにたどり着くまでにも、まだ話はあるのだが、日報が長くなってしまう為、泣く泣く割愛させていただく)
この店に初めて来た渡辺先生に“替え玉(麺のおかわり)のしくみ”を知ってもらうために、僕だけ替え玉をした。
僕も3軒目に替え玉をしたのは人生初であった。※良い子のみんなは、3軒目での替え玉はマネをしないようにね!
こうして僕らの『行け!麺(イケメン)ツアー』は、幕を閉じた。
「今回の3杯は余裕でしたね」と、前回のツアーからの成長を語る、まだまだ元気な安田弦生(げんき)先生。
今日の日報も、この文章で終わらせよう。
このラーメンツアーで見つけたもの。
それは渡辺先生が最後まで具材を残さずに食べたことでも、すべて食べた後もまだ余裕があったことでもない。
このツアーに参加しようと思ってくれた、少食の(と聞いていた)“渡辺先生の勇気”であった。