大河ドラマと聞くとどんなイメージを持つだろうか?
たぶん「戦国時代の武将」とか「幕末の志士」が主人公で、戦いや政治のドラマが中心。
「織田信長」や「坂本龍馬」みたいな人物が出てきて、◯◯合戦や明治維新激動の時代を描く!というのが定番だった。
でも今年の大河ドラマ、『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は全然違う。
主人公は江戸時代の本屋・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)。
彼は浮世絵や黄表紙【今でいう漫画的なもの】の芸術家を世に広めた人で、いわば「江戸のメディア王」と呼ばれている。
戦いじゃなくて文化を広める人が主役なのは、大河としてはすごく珍しいこと。
「真田丸」以来、なかなか最後まで完走できなかった大河ドラマ。(汗)
最初はこの時代の設定で、どんな物語になるのだろうと思いながら見ていた。
そうしたら山東京伝に曲亭馬琴、葛飾北斎に喜多川歌麿、十返舎一九に杉田玄白、教科書に出てきた人物が次から次へと出てきて主人公と絡んで物語となっていき、僕はどんどん引き込まれていった。
そして今回はいよいよ東洲斎写楽が誕生!した瞬間を描く回で「その説で来たか!」と画面の前で叫んでいた。
このドラマの面白さは「人情噺(にんじょうばなし)」が中心になっているところ。
戦いの勝ち負けじゃなくて、人と人との絆や夢、葛藤が物語の核になっている。
師弟関係や友情や恋心、当時の庶民のことが丁寧に描かれていて、まるで落語の人情噺を見ているような温かさがある。
さらに、このドラマは歴史のミステリーである「平賀源内生存説」といった脚色も取り入れて、歴史好きもドラマ好きも楽しめる構成になっている。
そして一番心に残るのは、江戸の人々が様々な規制の中でも楽しさを忘れなかった姿。
出版や芸能には厳しい取り締まりがあって、表現の自由は厳しく制限されていた。
それでも人々は別の表現を追求し、工夫を凝らし、ユーモアや機転を利かせて文化を育てていった。
その姿は、日本人が大切にする「粋」や「楽しむ力」の大切さを教えてくれる。
『べらぼう』を見ていると、困難な状況でも楽しさを忘れない人々の姿に感動する。
最後はどうやらラスボスとの戦いになりそうだ。
僕的には八人の仲間が集まって戦いを挑む「南総里見八犬伝」的な展開はどうかと期待している。(笑)
いよいよあと2回で終わってしまうのが寂しいけど、どんな形で江戸の文化革命を締めくくるのか、とても楽しみだ。
「大河人情ドラマ」として、楽しませてもらったこの作品、最後までしっかり見届けたい。