彼とは早18年の付き合いである。
数学的センスは、生徒たちに神扱いされるほどの抜群さを誇りながら、同時に、話術に長けたサービス精神の塊である。ご存知の通り、とにかく面白い男なのである。
昨夜も夜遅くまで食事を共にしていたのだが、常に彼は「ネタ」を持ってくる。
塾長、すごいことがあったんですよ…
塾長、〇〇ってご存知ですか…
身振り、手振り、再現付きでマシンガンのように話し出す。
正直、ずいぶん盛っているんだろうな~とも思いながらも、それ以上に、彼のサービス精神に感動すらしてしまう。
長期休みの後などは言うでもなく、土産話三昧である。
確実に複数のネタを用意してくる(作成してくる?)。
ネタ元をいったんシナリオに書いて、長時間、推敲しているのではないだろいうか…と疑うくらいに完成度の高いものに仕上げ、僕らの笑えるポイントを準備してくるのだ。
目黒:この煎餅と洋菓子は誰から?
高橋:僕ですよ。日本海に行ってきたんで、どうぞ。
目黒;ありがとう。でも、日本海と言えば、お土産は「蟹」じゃないのか?(笑)
高橋:実は、そう言われると思って、今日は特別に「蟹」を準備しておきました。(机の横から別の袋を嬉しそうに取り出して)これ、どうぞ。
目黒:「じゃがりこ贅沢カニだし味」って、蟹じゃないよ。じゃがりこだよ(笑)
高橋:(迫真の演技で)くそ~。そうか~。塾長の好きな「蟹」ってこれじゃないのか~
一同、大爆笑であった。彼は旅行中、お土産屋さんで「じゃがりこ」に描かれている大きな蟹の絵をみつけて、楽しかったに違いない。「日本海に行ってきました!」のあとにされるであろう会話を予測して、いたずらっ子のように、ニヤニヤ購入していたのだろう。
そして、将来の会話を予測して練りに練っていたのだろうか、先日の会話である。
目黒:まだまだ先だけど、息子さんは、私立中学進学とか考えないの?
高橋:そうですね~。今のところ考えてないですね~。
目黒:彼には海陽学園(日本一学費が高額で有名)なんかベストじゃないの(笑)?
高橋:彼が海陽(かいよう)に行ったら、僕が胃潰瘍(いかいよう)になりますわ(笑)~。
目黒:参りました(笑)
かいよう、いかいよう~とは、芸人ジョイマンも驚きである。
決して、瞬時に出てくる会話ではない。きっと彼はこの会話を予測し、準備していたのではないだろうか。
ちなみに10年以上続く会話パターンがある。
目黒:あなたから「お歳暮」がまだ届いていないんだけど。
高橋:あれ?松坂牛届いていないですか?
目黒:届いていないよ。
高橋:宅配会社に文句言っておきますわ。宅配会社は人手不足ですからね。クレーム入れておきますわ~。
ちなみに夢現塾では、社内のお中元・お歳暮は禁止事項であるが、彼は社則を破ってまで、僕にお届け物をしてくれようと言うのか。ただ、不思議なことにいつも宅配会社のミスで届かない(笑)。
彼が新卒の時から、ちょこちょこやる行動がある。
彼が先に、その日授業が行われる校舎に入り、15分程後に、僕が入る。
彼は(大きな音を出して)トイレを掃除している。
目黒:何やっているの?
高橋:(ちょっとどや顔で)トイレ掃除です!
目黒:俺が来る時間を計算して掃除しているだろ(笑)?新卒じゃないんだから、もう褒めないよ(笑)。
高橋:いやー。こんな一生懸命な姿、見つかりたくなかったんですけどね~。すみません。(得意顔で)不器用なもので…
どうせ誰かがやらなければならないならば、彼はトイレ掃除までも面白くしてしまう。
そんな彼のサービス精神に、ただただ脱帽である。
学校から疲れて帰り、そのまま塾へ直行する中学生も多いだろう。落ち込むことがあったり、精神的に参るような出来事があっても、それでも塾へ足を運ぶ小・中学生に、元気を与える彼のサービス精神溢れる「おもてなし」から学ぶことは多いと、僕は素直に思う。
副塾長、いつも本当にありがとう。