テレビでは何度か見たことがあったが、現地では一度もなかった。
11月11日(日)CS港アセットサッカー場
試合開始の2時間以上も前に到着した。理由は、試合前の両チームの動きを見たかったからだ。登録されなかった選手や応援団を含むチームがどういう行動をするのか。決勝まで進んだ2つのトップチームの動向が見たかった。
開場し、観客席につく。試合前のアップが始まる。両チームともメニューが大きく異なることはなかった。突飛なことをする様子もない。当たり前のことをいつも通りしている様子だ。流石、決勝戦まで勝ち上がったチームだ。当たり前の水準が非常に高い。これはサッカーだけに限らないと思う。素敵なものを見させてもらって、とてもうれしい。
12時55分、試合開始のホイッスルが鳴った。画面越しでは感じられない熱量がひしひしと伝わる。一つひとつのプレーに会場が湧く。試合を観戦しながら、サッカーに打ち込んでいた時期が懐かしく思い出される。決着がつかず延長戦へ。それでも決まらず、PK戦へと展開された。先攻の5人目がボールをゴールに収めて試合は終了した。歓喜の声をあげて走り回るチームと、言葉を失って一歩も動けないチームに分かれた。そこに観客席からは健闘を称えた拍手が両チームに送られた。
見応えのある試合だったが、それよりもインパクトのある事があった。
それは試合の前のこと。
片方のチームのOBが応援に駆け付けていた。そのOBのうちのとある3人組がベンチに座る僕の前を通った。彼らの片手には手袋がはめられていて、もう一方の手には大きい袋があった。僕は全く気付かなかったが、茂みの中にあるプラスチックごみを拾い、ごみ袋の中へ入れた。袋に目をやるとパンパンに膨れ上がっていた。思わず声をかけてしまった。後輩たちが優勝するために、自分たちができることをしたくて、ごみ拾いをしていたとのこと。この3人だけなのかどうか、どのくらいの規模なのかは分からなかったが、後輩のために、母校のために、何かできることはないかと考え、しかもそれを実行する行動力に感動した。この行動に結びつくマインドを持たせた環境に、サッカーだけではない側面を育ませたこの学校、チームに感動を覚えた。正直、試合の結果よりもこのマインドが強烈に記憶に残っている。
これは映像として記録されることはないが、僕だけでなく会場に来ていた観客の複数人の目に彼らの行動は写され、記憶されているはずだ。
そして、これも映像には写っていなかったが、とても印象に残っているシーンがある。
円陣を組んだ後、必ずガッツポーズをする選手がいた。プレーも安定していて、最終ラインでチームを支えていた。きっとチームとして決して欠けてはいけない大きなピースの1人なのだろうと考えられる。そんな彼はチームメイトがPKを止められた時に真っ先に駆け寄っていた。そして、最後の挨拶の時には真っ先に整列していた。負けて打ちひしがれる選手もいる中で、涙を流しながらも凛々しく振舞う逞しい姿はとても立派でした。
サッカー経験者として、彼の立ち振る舞いにはとても感動した。
また、夢現塾の教師の1人として、彼のことを誇りに思う。