サッカーの試合で好きなシーンがある。ゴールシーンはもちろん、他にもいくつか好きなシーンがある。
中でも特にお気に入りのシーンがある。それはパスが通らなかったシーンだ。
これだけだと、ただ性格が悪い印象を与えるだけになってしまう。誤解を解くためにも続きをぜひ読んでもらいたい。そしていつの日か、そのシーンを見てもらいたい。
キーワードは「拍手」。
意思の疎通ができなかった、もしくはタイミングが合わなかったのか、何かしらのズレでパスが通らなかったシーン。
パスが通れば勝利に導くプレーではあるが、失敗すればチャンスを逃してしまい、さらにこちらのピンチにもなり得る。
パスの精度が悪く、長い距離を走らせた選手。
パスの精度が悪く、長い距離を走らされた選手。
両者間でギクシャクしてもおかしくないシーンだ。イライラしてフラストレーションが溜まっても仕方がないだろう。しかし、「拍手」がチームメートから送られる。そのプレーを称えるように。間に「拍手」を挟むことで目線は次に向く。
パスが出される側は、次はより良い精度のパスを期待できる。
パスを出す側は、次はより良い精度のパスを出そうと奮闘する。
この相互関係がプラスに働くのだと思われる。真偽は定かではないが、僕はこれを意識して「拍手」を送っていると考えている。
眠い目を擦りながら車を降りてくる生徒。部活や体育の練習でけがをした足を引きずりながら教室に入っていく生徒。習い事で途中からでも授業を受ける生徒。いつも5分前には教室にいて自習をしている生徒。テストでうまくいった生徒。うまくいかなかった生徒。
どの生徒にもこちらからは見えない、知られたくないバックグラウンドや感情があると思う。良いことがあった日も、気分が落ち込んでいる日も、疲れている日もあるだろう。
どんな状況でも夢現塾に来たからには、全身全霊で授業をしたいと常に考えている。
そして塾から帰るときは「拍手」をささやかながら贈りたいと思う。
子供たちの目線が次に向くように。