一昨日のことだ。
特訓テスト終了後の午後7時45分、男子生徒の一人が申し訳なさそうに言ってきた。
「本当に申し訳ありません。トイレを詰まらせて、水が溢れて、大変なことをしてしまいました…。」
「大丈夫!任せろ!直しておくから!教室に行っていいぞ。」
男子生徒は少し安心したように教室へ向かう。
トイレのドアを開けると、手洗い付近まで水が溢れている。
何とか床を拭こうとしたようで、トイレットペーパが山盛りになっている。かわいい奴だ(笑)。
教師生活27年ともなると、このようなことは幾度となく経験してきたが、なかなかすさまじい光景だった。味岡先生に叫ぶ。
「生徒たちが入らないように、使用禁止の張り出しをお願いしまーす!」
教室に向かって叫ぶ。
「男子トイレ故障して使えないから、必要ならば1階の教師用トイレを使ってくれ!」
トイレのスッポンを手に格闘するが、トイレの水がはね上がるだけで、一向に直る気配はない。焦る僕、無情に過ぎてゆく時間…早く教室に戻らねば。
授業終了後、再度、格闘。
まずい。幸田校舎は男子だけでも120名はいる。早く直さなければ、明日以降も大変なことになる。
もっと強力なスッポンが必要だ。緑丘校に電話をかけた。
「緊急事態発生!大至急、トイレ用の大きなスッポンを幸田校に運んでください!!」
10分後、大きなスッポンを持った渡辺先生が勇者のように登場する。
しかし、その勇者も現場を見た瞬間、驚愕の声を上げる。
「なんと!これはひどい…!」
僕はスッポンを受け取り、ひたすら戦う。
バケツにトイレの水を移し、ウリャ!ウリャ!ウリャ!とスッポンスッポンする。
トイレの水がズボンにかかる。シャツにかかる。そして、顔にもかかる…。
精神的に負けそうになった。
事務室の冷蔵庫に貼ってある「水のトラブル110番」が頭をよぎるが、修理価格の恐ろしさを経験したことがあるので、なんとかしたい。自分でやれることは何でも自分でやらないと気が済まない性格も手伝い、とにかく格闘する。
しかし、一向に光が見えない。スッポンスッポンスッポンスッポンスッポンスッポン………。再度、水が顔にかかった。
もう心が折れそうだ。
最近DVDで見ていた「巨人の星」のテーマ曲が頭の中で流れる。
♪思い~こんだ~ら~試練の道を~行くが~男の~ど根性~♪
続けて別の曲も。
♪負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと、駄目にな~りそうな時 ~それが~一番大事~♪
トイレの奥に手を突っ込んだり、水を何度もバケツに移したり、格闘すること約1時間。「ンゴゴゴゴゴゴ~」と水の流れる音がついにきた!
「やったぜ!やったぜ!!やったぜ!!!」
叫ぶ僕を笑顔で迎えてくれる味岡先生と渡辺先生。ジュースで乾杯し、仕事終了となった。
なんと11時45分。遅い業務終了となってしまった。
しかーーーし、僕は声を大にして塾生諸君に言いたい。
意志あるところに道は開ける!
Where there is a will, there is a way.
達成感に身を包んだ夜だった。