「加納先生、減量しないんですか?」
「加納先生、もうダイエットやめちゃったんですか?」
「加納先生、いいんですか?太りますよ?」
「加納先生!」「加納先生…」「加納先生………」
人は悪夢を見た後に「ハッ」と飛び起きる。その現象と同様、私は大好きな脂肪と糖を吸収した後は「ハッ」と現実に戻るのだ。
食べながら、いろんな人からの呼びかけが頭をめぐる。「そんなもの食べてもいいのか?」「ダイエットはやめたのか?」と私の心に訴えかける声がこだまする。
そんな叫びを蹴散らすように、もくもくと食べ進めた後に自分を納得させる魔法の言葉を自分の中に落とし込む。
「明日から減らせばいいや。」
これが毎日繰り返されること、早
3ヶ月…
以前の日報でしたダイエット宣言後、実際
5kgまで体重が落ちた今年の夏。
パツパツだった服も入るようになり、顔もスッキリし、「痩せたね」という言葉をかけられることが快感になっていた。
その快感は時に美に対するさらなる意欲となり、時に安心感をもたらしてくれた。
が、時が経つにつれ、徐々に私の快感は「安心感
>美に対するさらなる意欲」となっていったのだ。
気づけば、昨日今日明日もマクドナルド。
明後日も明々後日もマクドナルド。
マクドナルド中毒のごとく、車は毎晩マクドナルドへと向かっていた。
そしてこの日報を書いている今も、目の前にはスパイシーチキンバーガーとアップルパイが置いてある。
あと
10日後に特大のビッグイベント、『健康診断』が待っているというのに…
「たった
10日で何ができるんだ!」と自分を納得させ、糖と脂肪の元を口へと運ぶ。
3ヶ月、
4ヶ月前の私がこの生活を見たら確実に泣くことだろう。この頃の私が痩せたかった本当の理由は、大好きな欅坂
46のライブに痩せた状態で行きたかった、ただそれだけの理由だった。
しかし、ライブが終わった途端、痩せる理由がなくなった私の体は正直に、食べたいものをただただ素直に求めた。
そして現在に至り…昔の私はほぼ完全復活した。
今年は健康診断で褒められるかな?と期待していただけに、健康診断に向けて順調に太ってきている自分に罪悪感と諦めの気持ち。
10日。残り
10日か…
10日もある、と思うべきか…
10日しかない、と思うべきか…「痩せたい」けど「食べたい」… 「太りたくない」けど「止まらない」…
感情は二律背反。なんてアンビアバレントなのだろう。
中学生は今年最後の定期テストが終了し、小学生も同じく今年最後の
MJテストを終えた。
彼らは本番
10日前、どんな気持ちでどんな生活を送ってきたのだろうか。
もし、もう
1度本番
10日前に戻れるなら、彼らはその期間をどう過ごすのだろうか?
少なくとも、本番
1日前の彼らはとてつもなくたくましかった。
「分からない問題はとにかく無くしたい」
「これだけは解けるようにしたい」
「ここからここまでは完璧に覚えよう」
本番前日、いや、正確には本番
14時間前でも彼らはとにかく戦っていた。問題と、そして自分と。「まあ、いっか」という雰囲気など微塵も感じられない空気。みんながみんな、限られた時間の中、今できることをこなし、自分を高めていた姿が脳裏に焼き付いている。
彼らになら、
10日前に戻れるよ、と言ったとしても「これもやれる!」「あれもやれる!」と確実に大喜びするのだろうな…
アップルパイをかじりながら、今私は心に誓った。これが最後のアップルパイだと。
健康診断
10日前。
明日やろうは馬鹿野郎。
10日で何ができるか、
10日間の気持ちの変化、
10日間という限られた中での可能性を楽しんで過ごしてやろうじゃないか。
10日後、「これもできた!」「あれもできた!」と思えるように…