私の引っ越し先のリビングやキッチンには、スイッチが6個も並んでいる。
前に住んでいた家では、ひとつの場所にひとつの電気、というのが当たり前だったこの光景はなかなか衝撃的だった。
しかも、それぞれに何の説明もない。
夜になって部屋が暗くなるたびに、「これはどれだろう」と、壁に並んだスイッチを順番にパチパチ押していく。
まるで、どこかに“当たりボタン”が隠されている宝探しのような感覚だ。
ひとつ押すと、天井の照明がふわっとついたり、別のひとつでは、壁際の小さなライトだけが控えめに光ったりする。
「おしい」「あ、これでもないか…」
そんな独り言をつぶやきながら、毎晩ちょっとした探検をしているみたいだった。
でも、さすがに毎日それを続けるのも大変そうだと思ったのか、母が「テプラ(ラベルプリンター)」を買ってきた。
白い細いテープに、「リビング天井」「窓側ライト」「ソファ横」「キッチン側」などと印刷されていく文字。
それをスイッチの上にひとつずつ貼っていくと、さっきまでただの謎だったボタンたちが、急に意味のある存在に変わっていった。
今では、どの明かりをつけたいかを考えなくても、自然と指が正しいスイッチにのびている。
”
一致させることの大切さ”
(社会での出来事や人物と時代名を一致させること)を常々生徒には話しているが、このスイッチの件では私にブーメランとして返ってきた。
生徒でも特にこのパターンが多いなと感じるのは、公式や用語、出来事をひとつひとつバラバラに覚えようとしがちだということだ。
頭の中が混乱して、どこに何があるのか分からなくなることも多い。
でも、少し整理して、「これは公式A」「これは単元Bの用語」「これはこの時代の用語で、これはC地方の話」と分けて考えるだけで、頭の中はずっと扱いやすくなる。
勉強も、頭の中でラベル付けをすることでどこに何があるか分かれば自然と取り出しやすくなる。
この冬は、焦らずひとつずつ知識の場所を意識して向き合ってみよう。
小さな整理を積み重ねるだけで、頭の中の情報は、今よりずっと扱いやすくなるはずだ。