人間の関心事の1つが「健康」。体の調子が悪いとネガティブな気持ちになる。肉体的なつらさは精神的なつらさにつながる。学校のテスト前にインフルエンザなどの体調不良での欠席連絡があると、いつも以上に心配になってしまう。
「○○が健康にいい」という情報。ある時代では常識とされる情報が、ある時代では非常識ということは古今東西よくある話だ。たとえば「ひじき」は鉄分が非常に高い食材とされてきた。鉄分の主な働きは全身に酸素を運搬することだそう。脳へ酸素が行き渡らないと思考力、学習能力、記憶力の低下につながる。ということは「ひじき」を食べると学習効果アップということで、給食で定番メニューの1つであった。
ところが、「ひじき」の鉄分の正体は調理する際に使う「鉄釜」の鉄分であった。鉄釜で調理したひじきの測定値=ひじきの鉄分とされたのだ。ステンレスの釜で調理すると「鉄分」の数値は激減したそうだ。ということで「ひじき」の主な栄養素から「鉄分」は削除された。とはいっても他の有益な栄養素が含まれているので「ひじき」を食べることは決して無駄ではない。
「ひじき」の例ならかわいいものだが、歴史上ではとんでもない健康法があふれている。有名なものの1つが「水銀」を飲めば健康になり長生きするという話。過去に多くの歴史上の人物が「水銀」を飲み、寿命を縮めていった。中国では古くは秦の始皇帝から始まり、歴代王朝の皇帝が水銀中毒で命を落としたとの記録がある。欧米でも水銀を「薬」として服用していた時期もあったそうだ。
水銀が重宝された理由の1つとしては、もともと水銀が含まれている鉱石の「辰砂(しんしゃ)」が鮮やかな朱色をしており、そこから銀色に輝くの水銀が精製されることが不可思議で魅力的だったそう。欧米ではそこに怪しげな錬金術が加わって実に多くの人々を魅了したらしい。
飛鳥時代に日本に仏教が伝わってから、辰砂の朱色は寺や仏像の顔料(絵具)として、精製された水銀は仏像に金メッキをするために利用された。辰砂の有名な鉱山が三重県にあり、大量の辰砂が飛鳥や奈良の都に運ばれたそうだ。ちなみに奈良の平城京から長岡京(平安京の前の都)に都を移そうとした理由に土壌の水銀汚染があったという説がある。
ここ最近のニュースでは、生成AIによる音声での詐欺が急増している報道が目立つ。知らなかったで手遅れになる前にまずは知ること、そして学び考え、正解を導き出す力を身につけること。「これが正しいという噂を『簡単に』信じちゃいけないよ」ということだろう。